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マスク着用で顎関節症に!?

こんにちは。

千葉県船橋市にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。当院はJR総武線【東船橋駅】南口から徒歩30秒にあります。

 

9月も中旬に差し掛かり肌寒い日が続いていますね。毎年言われて“耳にタコ”かもしれませんが、夏から秋への季節の変わり目は体調を崩しやすい時期です。特に現在は新型コロナウイルスの影響で、体調を崩してもすぐに治療を受けられるかは正直心配なところです。コロナの感染対策のためでもありますが、ちょっとした風邪でもかからないように、引き続き手洗い・うがい・換気等をおこない、健康に気を付けていきたいですね。

 

さて、普段のブログではお口の中のお話、とりわけ“歯”についてお話しすることが多いのですが、本日はお口の下の部分のお話をしたいと思います。どこのことかわかりますか?そうです、『顎(あご)』ですね。

普段鏡をのぞいても自分の顎を凝視する機会はほとんどないかと思います。強いて言うのであれば、男性が起床時に顎髭(あごひげ)を剃るときくらいでしょうか。

9月に入ってもなお全国各地で猛威をふるっている新型コロナウイルス、そしてその予防のために毎日“マスク”が欠かせませんね。ただそのマスクが私たちの顎(あご)に悪影響を及ぼすこともある、ということをご存じですか。実は新型コロナウイルスのパンデミック以降、“顎関節症”に悩まれる患者さんが増えているのです。そこで本日は顎関節症の症状とその原因、そしてその治療方法についてご案内していきます。

 

 

顎関節症ってなぁに?

顎関節症(がくかんせつしょう)とは、簡単に言うと顎の調子が悪くなることです。具体的な症状としては以下があげられます。

 

・口を開けるときに痛みが走る

・口を開けにくくなる

・口を開けるとカクカクと音が鳴る

 

 

その他にも首、肩のコリや頭痛、耳がつまった感じ、目の疲れなどを併発する患者さんもいるそうです。なお簡易的ではありますがセルフチェックも可能です。3本の指(人差し指・中指・薬指)を縦にして口に入れてみてください。もしこれで口に入れるのが痛くて難しいのであれば顎関症が疑われます。一度病院にて診察をうけることをおすすめします。

 

 

とても器用な顎関節、その秘密は「ぶら下がり健康法」にあり?

下のお写真は院長のお気に入り“カラフルな頭蓋骨くん”です。一見図画工作の時間に色塗りをしただけのように思いますが、実はこの頭蓋骨くんはとても有能。骨の種類ごとに色分けされています。そして今回注目したいのは3か所です。1つ目は黄色の部分の「上顎骨」、2つ目は白い部分の「下顎骨」、そして3つ目は下顎骨とオレンジの部分に挟まれた透明な部分「関節円板」です。関節円板は顎が動くときに骨同士が直接擦れないようにクッションの役割をしています。膝でいう半月板のようなものですね。

 

ちなみに顎って上下に開閉するだけではなく、前後左右にもスライドできますよね?ところが、膝や指というのはある決まった方向にしか動きませんね。ちょっと不思議ではないですか。実はここには“関節”の構造が大きく関わっています。骨と骨とのつなぎ目にあたる部分を“関節”と呼んでいますが、関節は大きくわけて2種類あるのです。

 

★のしかかり関節…常に体重がかかっている関節。大きな負担を受け止められる。

例)膝関節、股関節

★ぶら下がり関節…普段は力による負担のかからない関節。大きな負担には弱いが器用な動きができる。

例)肘関節、肩関節

 

 

 

“のしかかり関節”は膝関節に代表されるように大きな負担を受け止められます。例えば体重70㎏の方には常に膝にそれと同程度の負担がかかっているということです。肥満に悩む方が膝痛に困っているという話を聞いたことがありますが、まさしくこの原理ですね。

そして、“ぶら下がり関節”というのは器用な動きが特徴です。肘や肩は一方向にだけではなくグルグル動きますよね。これができるのはぶら下がり関節のおかげなのです。極端なことを言えば“亜脱臼”の状態と似ています。関節が外れかかっているようなその状態が器用な動きを可能にしているのです。そして先ほどお伝えしたように顎関節も上下前後左右に器用に動かすことができますね。つまり顎関節=ぶら下がり関節なのです。

 

しかし、顎関節のスゴイところはこれだけではありません。実はすごく“タフ”な関節なのです。人間の噛む力というのは体重ほどの力がありますので、体重100㎏の方であればそれと同じくらいの力が顎にかかっていることになります。そして顎はこの力を受け止めているのです。しかしお顔の一部分である顎がなぜこんなにも強い力に耐えられるのでしょうか?

 

それは先ほどお話したぶら下がり関節のおかげです。顎は普段から『ぶら下がり健康法』をしているのです。よく腰痛予防や肩こり・猫背の改善に推奨されているアレですね!上のカラフルな頭蓋骨くんを見るとわかるように下顎骨は頭蓋骨にぶら下がっている状態です。噛んだり動かしたりしていないときは、ダラーンとぶら下がっており、関節を休憩させている状態なのです。だから、いざという時に強いパフォーマンスを発揮できるのですね。しかし、無意識で上下の歯をグッと食いしばってしまう人もいます。そうすると常に緊張状態が続き、顎関節が休めません。これにより顎関節症のリスクが高まるのです。

以下に顎関節症の主な原因をあげますので、セルフチェックをしてみましょう。

 

 

顎関節症の原因は?

顎関節症は複数の要因が積み重なって起こる多因子疾患です。もともと顎関節や顎の筋肉が弱い方が上下の歯の咬み合わせの悪さが原因で発症する場合もあれば、日常生活、食生活、そして無意識のクセもすべて引き金になりうるのです。

 

・歯ぎしり、食いしばり

仕事や人間関係など緊張やストレスのかかった状態が続くと、主に睡眠中に歯ぎしりや歯の食いしばりが起こります。そして実はこれらは自分の体重と同程度の力か、その数倍から10倍くらいの強い力が歯にかかると言われているのです。私の場合体重が○㎏ですから、考えただけで恐ろしいものです。(ブルブル…)歯ぎしりや 食いしばりは歯の表面のエナメル質が摩耗(まもう)すなわちすり減ったり、欠けたり、割れたりする原因にもなります。そして歯だけではなく、顎の筋肉や関節にも大きな負担をかけるのです。顎周辺の筋肉にとっては休みなくハードな筋トレをおこなっている状態が続き、かつ顎関節にとっては、バーベルを背負っているときの膝の関節のような状態が続くことを意味します。それはもう悲鳴をあげますよね。

 

・TCH

TCHとはTooth Contacting Habitの略で日本語では“上下歯列接触癖”といいます。上下の歯は常に接触していると思われがちですが、実は平常時には1~3mmほどの隙間があります。接触するのは食事中や会話中のみで1日に17分程度しかないとも言われているのです。しかし何もしていない時に、無意識に上下の歯をかみ合わせことが癖になっている人もいます。これがTCHです。筋肉や顎関節に負担がかかるため、顎関節症の原因になります。さらにその他にも歯の欠損、知覚過敏、歯周病にもつながるのです。パソコンやスマホの使用中や自動車の運転中など無意識のしがちですので、意識的に歯を話したり、視界に入るところに『歯を離す!』という付箋を貼っておいたりするのもよいでしょう。

以前のブログでもTCHについて詳しく書いておりますのでぜひご覧ください。

 

・硬いものを強くかじる

顎関節の周りには実にたくさんの筋肉が集まっています。私たちは「物を噛む、食べる」と言った咀嚼(そしゃく)をするときに、上下の顎を上に下にと器用に動かしていますよね。その時イラストのように顎周りのたくさんの筋肉が使われています。しかしあまりに硬いものを強くかじることが続くと、これら顎を動かすための筋肉がヘトヘトに疲れ、いわゆる筋肉痛を引き起こします。これにより顎関節症につながるのです。私自身どちらかというと硬くて噛み応えがある食べ物が大好きで、特に硬い煎餅(せんべい)には目がありません。そしてボリボリと一度にたくさん食べてしまうので、1袋食べ終わったあとは、いつも顎に疲れを感じています。こういった食生活も顎関節症の原因になるのですね。今のところ症状は出ていないですが、気を付けたいと思います。

 

・楽器の演奏

ピアノ、カスタネット、トライアングルなどなど様々な楽器がありますね。ただその種類によっては楽器の演奏時に顎関節に大きな負担を与えるものもあります。例えばバイオリンは演奏時に顎で楽器を挟むので顎に負担がかかります。これは頬杖などと同じ力がかかっている状態のため顎関節が圧迫され痛みが出ることがあるのです。そして吹奏楽器は下顎に後ろ方向への力をかけますが、顎関節にとって後ろ方向というのは弱い向きのため大きな負担になります。またドラムやピアノといった直接口をつかわ ない楽器も黙々と弾いたり逆に激しく演奏したりすると、TCH、噛みしめが起きている場合があります。これらの楽器では演奏にほとんど影響はないと思えますので、もし可能であればマウスピースの着用も効果的です。(マウスピースについては後述します。)

 

・マスクの着用

新型コロナウイルスの感染拡大以降、外出時にはマスクを欠かせない生活が続いています。もちろん私たちの健康を守るためものですが、実は今このマスクが顎関節症の原因にもなっているのです。皆さんも毎日肌で感じているかもしれませんが、マスクを長時間装着していると顎が動かしにくくなりませんか。顎周りの筋肉が動かしにくくなり緊張し、歯をくいしばりやすくなるため顎関節症などの症状を引き起こすのです。また耳にかけるゴムひもの影響も少なくありません。口を開ける際に少なからず引っ張られてしまうため、これも顎周りの筋肉の負担になります。更にマスクをしている際は呼吸がしづらいですよね。そうすると下顎を少し突き出して、唇とマスクの間に隙間を作って息をする、といった経験はありませんか?私は真夏に外を歩いているときに結構やってしまいました。「日差しが暑くてマスクで顔も暑い、でもマスクをとるわけにはいかない」というときに、こっそりマスクの下で下唇を突き出して“フー”と息を吐くのです。しかしこの下顎のポジションは不自然な位置、すなわち大きな負担を強いているのです。

このように新型コロナウイルス感染予防のために装着しているマスクが、顎関節症の発端になっている例も少なくありません。とある整骨院さんでは顎関節症等で悩んで来院される患者さんが前年のおよそ2倍ということですから驚きです。

 

 

 

顎関節症の治療方法

患者さん個々の発症要因によって治療方法は多岐にわたります。ここでは歯科医院として当院ができる治療方法に絞ってご紹介していきます。

 

1.咬み合わせ改善のための治療

1)マウスピース

マウスピースとは上顎もしくは下顎の歯に被せて使用するプラスチック製の装置です。患者さんの歯型をとり、当院で専用のマウスピースを作成します。咬み合わせを暫定的にニュートラルな位置に戻す治療です。

 

2)咬合調整

本来自由でスムーズな下顎運動を妨げる咬み合わせのひっかかり(=咬合干渉)がある場合に、歯を削って高さや咬み合わせを調節する治療です。ただし歯は一度削ると元には戻りませんので、初期治療での咬合調整は基本的にはおこなわないことが多いです。

 

3)矯正治療や補綴治療

現存の歯並びを長期間にわたって整えていく矯正治療や、歯科専用のプラスチック・陶器・金属といった補綴をつかって失われた歯を補う補綴治療です。補綴には詰め物(インレー)・被せ物(クラウン)・入れ歯・ブリッジ・インプラントなどがあります。

 

 

 

2.筋肉のリラクゼーションのための治療

1)筋弛緩訓練法

顎の癖取り体操、カムカムチューブ体操により筋肉の緊張をほぐします。

 

2)咬筋ボツリヌ治療

ボツリヌ菌の酵素により咬筋の緊張を抑制する治療です。6ヶ月に1回程度繰り返すと有効です。

 

3)トリガーポイントブロック療法

硬化した筋肉のコリ部分(トリガーポイント)の痛みを取ることにより、筋肉への血流を回復させる治療です。トリガーポイント、いわゆる痛みの元になる部分に局所麻酔をしていきます。

 

4)TCHの改善指導

顎関節症の原因の項目でご説明した“上下歯列接触癖”の改善を目指します。こちらは治療というよりも生活習慣の改善になりますので患者さんご自身のご理解・ご協力が必要です。

例えば、目のつくところに「歯と歯を離す!」と書いた付箋を貼っておいたり、その付箋を写真に撮ってスマートフォンの待ち受け画面に設定しておいたりなど、アナログな方法ではありますが、まずは“意識”をして歯を離すというのが大切です。他に姿勢や舌のポジショニングを正すことも有効です。

 

 

セルフケアも大切

上で歯科医院での治療方法を書きました。しかし顎関節症というのは実はセルフケアでも症状が改善しやすい病気です。日常生活や食生活が原因と考えられる方は以下の点も注意してみましょう。

  • 痛みが強い時期は、柔らかいもの(うどん、おかゆ等)を食べるようにする
  • 口を大きく開ける動作(あくび等)を避ける
  • 顎に負担がかかるのでうつぶせ寝をやめる。
  • 猫背、前傾姿勢、頬杖をしない。特にパソコン作業、スマホの操作中は注意が必要です。
  • 食事の際に決まった側ばかりで食べない。咬み合わせに影響し顎に負担がかかります。
  • 頬などを蒸しタオルで温める。

 

 

いかがでしたか。日々忙しい中で、昨今では新型コロナウイルスの感染対策など強いストレスを感じることもありますよね。そうするとどうしても身体に力が入り、知らず知らずのうちに顎に負担をかけてしまうことがあります。一見すると、『ストレスが顎にダメージを与えるはずないじゃん!』と思われがちですが、今回ご紹介した通り、“ストレス”→“歯ぎしり&食いしばり”→“顎関節症”という例は少なくありません。そんな時は、お風呂に入ったり、ウォーキングをしたりなど自分の好きなことをしてストレスを発散していきましょう。そして万が一顎に違和感、痛みなどを感じた際には放置せず速やかに診察をうけるようにしましょう。ビバ歯科・矯正小児歯科でも顎関節症の診断・治療を行っています。少しでも症状がある方はぜひお早めにご相談下さいね。