新着情報

骨粗しょう症と歯科治療~顎骨壊死を防ぐために

こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。
当院のクレドには以下のような言葉があります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『口腔の健康は、全身の健康と密接につながっています。
ビバ歯科・矯正小児歯科は、歯科医療を通じて、患者さんの
全身の健康に寄与します。』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここに書かれている通りお口と全身には密接な関わりがあります。そのため歯科治療の内容によっては医科の先生と連携をとることもあります。今日はその中でも歯科治療で注意が必要な病気の1つ「骨粗しょう症」についてお話します。ぜひ最後までお付き合いくださいね。

 

骨粗しょう症とは?

骨粗しょう症は骨の密度が低下することで骨がもろくなり、骨折しやすい状態を指します。加齢にともなって誰もが起きるもので日本整形外科学会によると日本にはおよそ1000万人以上の患者さんがいると言われています。また骨粗しょう症は圧倒的に女性、特に閉経後の女性に多くみられます。骨粗しょう症の初期症状では身長の低下や背中の痛みなどがありますが、これらは軽度の痛みのため自覚症状が乏しいことがほとんどです。そのため気づいたときには症状がかなり進行していた、ということも少なくないようです。

 

レントゲン写真で診る骨粗しょう症

骨粗しょう症の診療は医科とりわけ整形外科が基本ですが、歯科のレントゲン撮影時にもその異変に気が付くこともあります。参考までに以下にお写真を掲載します。

(レントゲンの見方)
X線が透過した部分は黒、吸収された部分は白く写ります。そして高密度な組織ほどX線を吸収し白く写ります。つまり健康で骨密度が高ければ白が濃く、逆に骨密度が低ければ黒っぽく写ります。

 

骨粗しょう症の治療薬

骨粗しょう症の予防には栄養や運動も大切ですが、加齢にともなって誰もが発症するものです。そのため進行した骨粗しょう症の患者さんは骨折を防ぐために“治療薬”を使用します。種類は様々ですが主に3タイプあります。

 

  1. 骨が壊れるのを抑える薬

例)ビスホスホネート製剤、デノスマブ製剤、SERM(サーム)

  1. 骨が作られるのを促す薬

例)副甲状腺ホルモン薬

  1. 骨への栄養を補う薬

例)活性型ビタミンD3薬、カルシウム薬、ビタミンK2薬

 

これらの薬は骨粗しょう症の患者様が骨折を予防するためにとても大切な薬です。しかし一部の治療薬の影響で、まれに顎骨壊死(がっこつえし)が起こることがあります。

 

顎骨壊死とは?

顎骨壊死とは顎の骨の組織や細胞が部分的に死滅し、骨が腐ってしまうことです。お口の中は常在菌が無数に生育しているため、顎骨壊死を発症するとそれら細菌による感染が起こります。その結果、顎の痛み・歯肉の腫れ、顔の皮膚からの排膿などの症状が引き起こされます。なお、顎骨壊死の中でも薬の副作用に関連して引き起こされるものを薬剤関連顎骨壊死(MRONJ:Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw/ムロンジェイ)といいます。先ほどお話した骨粗しょう症の治療薬のうち顎骨壊死に関連するといわれているのは「ビスホスホネート製剤(BP製剤)」と「デノスマブ製剤」です。これらの薬剤による治療中に、抜歯やインプラント(*1)などの外科的な歯科治療をしたり、顎付近への放射線治療をしたりなど侵襲的な治療が発症リスクになると言われています。またそれ以外にも歯周炎などでお口の中が不衛生だったり、入れ歯による褥瘡(じょくそう:床ずれのようなもの)で粘膜が傷ついたりなどの条件下でも顎骨の炎症が生じ、さらに顎骨壊死が起こることがあります。ただしこれらの薬の使用(*2)により必ずしも顎骨壊死が起きるわけではありません。

 

*1インプラント治療について、以前は薬剤性顎骨壊死(以下MRONJ)のリスク因子とされていました。しかし日本口腔外科学会のポジションペーパー2023によると、近年『歯科インプラント埋入手術はMRONJのリスク因子に寄与しないとする報告』や、『BP 製剤投与中であってもオッセオインテグレーショ ンは得られ、インプラント喪失のリスクは少なかったとの報告』(オッセオインテグレーショ ン:インプラント体が骨に結合すること)もあり、現時点では必ずしもインプラント埋入手術が禁忌なわけではないようです。とは言え、こういった薬剤の服用や投与、その他全身疾患を有する場合にはMRONJのリスク因子があるため、治療計画は慎重におこなわれる必要があります。

 

*2顎骨壊死を引き起こすお薬はこれだけではありません。また骨粗しょう症の治療薬だけでなく、悪性腫瘍(癌)などの一部の治療薬でもみられることがあります。そのため歯科受診の際にはお薬手帳を必ずご持参ください。

 

どんな症状がでるの?

初期症状

  • 軽度の疼痛
  • 歯肉の腫れ
  • 歯の動揺
  • 歯周ポケットが深くなる

 

中期症状

  • お口が開きにくくなる
  • 下くちびるの感覚が鈍くなる
  • お口の中に顎骨が露出する
  • 露出した骨の周りに発赤や痛み・腫れ・排膿

下顎に排膿

 

末期症状

  • 顔周りや頸部の腫れ
  • 皮膚に膿の出口ができそこからの排膿
  • 顎骨の骨が広い範囲で壊死し病的骨折(本来骨折しない程度の外力でも骨折すること)

皮膚からも排膿

 

なぜ顎の骨にだけ起こる?

骨粗しょう症への効果が高いとされるビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤は、骨が壊れるのを防ぐお薬です。「骨が壊れる」というとちょっとドキっとするかもしれませんが、私たちの骨は新陳代謝を繰り返しています。つまり古い骨を壊す“骨吸収”と新しい骨をつくる“骨形成”によって常に新しく生まれ変わり、強度が保たれています。しかしビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤は骨吸収の働きを抑制します。それにより骨密度を増加させるのです。しかし、ここで1つの疑問が浮かびませんか。これらの治療薬は全身の骨に作用するはずなのに、なぜ顎骨にだけ壊死が起こるのでしょうか?

それは、顎骨が他の部位の骨と比べて、極めて細菌感染しやすい環境にあるからです。もっと言えば顎が口と隣接しているからです。現在考えられている理由を以下にご紹介します。

 

細菌感染を起こしやすい口腔環境

お口の中には多数の常在菌(歯垢1㎎中に10億個の細菌)がいます。さらに口腔内は温度が37度前後、だ液による湿度、栄養(食べ残し等)など細菌が繁殖する環境が整っています。つまりお口の中そのものが細菌培養器の状態で、細菌の感染リスクが高い環境です。

 

歯が顎骨に植立している

歯は歯槽骨と呼ばれる顎の骨に植わり、歯肉を突き破って生えています。そのためお口の中の病原菌が歯を介して直接顎の骨に到達しやすいと考えられます。例えばむし歯や歯周病などが原因で顎骨まで炎症が広がることもあります。

 

感染源の存在

歯周ポケットや根尖病巣など細菌の溜まり場になりやすい部位があります。

 

口腔粘膜の薄さ

顎骨を包む口腔粘膜はとても薄いため食事や日常生活の中ですぐに傷がついてしまいます。また不適合な入れ歯を無理に装着したことにより粘膜に傷がつきそこから感染、骨が露出するといことも考えられます。

 

顎骨は口腔と直接交通する

抜歯やインプラントなどの歯科治療により、顎骨は直接口腔内に露出しやすいです。

 

発症するリスクファクターは?

顎骨壊死が発症する可能性のある歯科治療及びお口の中の状態としては次にものが考えられます。

 

  • 骨を触る侵襲的な治療(抜歯・歯周病の手術など)
  • 不適合な入れ歯の使用
  • 過剰な咬合力
  • 口腔環境の悪さ(歯周病・根尖病変など)

 

 

なお、骨粗しょう症のお薬を服用していても、以下のような通常の歯科治療では影響はないとされています。安心してください。

  • むし歯の治療(歯を削る、神経を取る、詰め物や被せ物をする)
  • 歯型をとる
  • 入れ歯をつくる
  • ホワイトニングをする 等

 

顎骨壊死の治療法は?

顎骨壊死を発症すると自然治癒は困難です。またとても完治しづらい病気です。初期の場合、お口の中の洗浄と抗菌薬による治療が中心です。病気が進行している場合には壊死した骨を取る手術が必要で、その進行具合によっては顎を大きく切除することもあります。ただし、全身の健康状態によっては手術自体ができないこともあり、その場合には頻回の洗浄をおこないます。いずれにしても感染源をできる限り減らすため、お口の中の環境を整えておくことがとても大切です。

 

顎骨壊死の予防法は?

冒頭でお話したとおり、骨粗しょう症は加齢にともなって誰もが起こる可能性があるものです。とは言え、骨は私たちの体を支え、また脳や内臓を守ってくれる大切な働きをしています。だからこそ、できる限り骨が健康な状態を保ち、顎骨壊死を予防したいですよね。ではその予防をするにはどうすればよいのでしょうか?

それは「お口の中を清潔に保つこと」です。何も特別なことはない、実にシンプルですよね。日頃のむし歯や歯周病予防と同様です。あとはもし該当するお薬を服用することになったら顎骨の骨を傷つけたり、炎症が広がったりするような歯科治療はできる限り避けたほうがよいでしょう。またできる限り、お薬の服用前にすべての歯科治療を終えておくことが望ましいです。とは言え、根管治療(神経の治療)のように複数回にわたる治療もあります。慌てて歯科治療を始めても時間がかかりお薬の服用タイミングに間に合わなくなることがあります。そのため、日頃からお口の中の衛生状態には気を付け、定期検的な歯科受診が大切ですね。

 

こんな症状がでたら歯科医院に

該当のお薬を服用していてかつ次のような症状あればできる限り早くかかりつけの歯科医院に行きましょう。

  • 抜歯後の痛みが長期間続くとき
  • 歯ぐきから灰色もしくは白色のもの(骨)が露出してきたとき
  • 下唇の感覚の鈍りもしくは痺れがあるとき
  • 顎が大きく腫れたとき
  • 歯が急にグラグラしてきたとき

 

最後に

「〇〇についてブログに書いてほしい」などのリクエストや「△△って何?」などのご質問も随時受け付けております。以下いずれかよりぜひご連絡いただければ嬉しいです!

(問い合わせ方法)

  • お問い合わせフォームはこちら
  • TwitterのDMは@viva_shikaで検索

医院概要

医院名 ビバ歯科・矯正小児歯科
住所 〒273-0002
千葉県船橋市東船橋1-37-10
(タップでGoogleマップが開きます)
電話番号 047-421-0118
最寄り駅 JR総武線「東船橋駅」南口 徒歩30秒
アクセスの詳細はこちら
駐車場 敷地内に5台分の駐車場があります
休診日 水曜(第1週)・木曜(第2週以降)・日曜・祝日