新着情報

薬剤性顎骨壊死のリスクと歯科治療

こんにちは。千葉県船橋市の東船橋駅から徒歩30秒にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

 

2021年も残すところあと1週間となりました。この時期毎年の恒例行事ではありますが大掃除は順調ですか?

ビバ歯科は年内最終診療日の29日の午後から一気に片づける予定です。それとみなさん、ご自身のお口の中の大掃除はいかがですか。むし歯や顎の痛みなど何か気になることはありませんか?

年末年始は歯科医院も休診のところが多いため、すぐに診てもらえるとは限りません。特に歯の痛みというのは重症化すると何とも耐え難く、また歯周病などの場合には動脈硬化、糖尿病、誤嚥性肺炎などの全身疾患に関わることもございます。そのため、少しでもお口の中に不安がある方は今年中に歯科での治療を終え、安心して新年をお迎えくださいね。

 

さて、本日は『薬剤性顎骨壊死』という病気についてお話します。

少し難しそうに思えますが、漢字のとおり、「薬剤が原因で顎の骨が死んでしまう」ということです。これは特定の種類のお薬を服用中に侵襲的(*)な治療を行った際、顎の骨に炎症が生じ更に壊死するという病気です。

*侵襲的…病気、怪我、そして手術などの医療処置で生体を傷つけること

 

一般にはまだまだ知られていませんが、該当のお薬を服用されている方にはぜひ知っておいてほしい病気です。ぜひ最後までご覧くださいね。

 

薬剤性顎骨壊死の原因

骨粗鬆症やがんが骨に転移した時に処方される、ビスホスホネートとデノスマブという薬が原因で発症します。

ビスホスホネートとデノスマブは簡単に言うと“骨密度をあげる薬”です。骨が溶け出るすなわち骨吸収が起こるのをブロックし骨を丈夫にするのに効果があります。しかし副作用として薬剤性顎骨壊死の問題があります。特に、これらの薬剤による治療中に局所(顎付近)への放射線治療、抜歯やインプラントなどの外科処置、口腔内の不衛生などの条件が重なると、顎の骨が露出し腐る顎骨壊死を発症することがあります。特にもともと歯の感染症がある方は顎の骨に炎症が及び顎骨骨髄炎を引き起こすこともあります。

(最近の研究では薬剤性顎骨壊死と抜歯との相関関係は低いとする研究結果も出始めています)

 

ところで、なぜこれらの副作用が起こってしまうのでしょうか。

ビスホスホネートなどの骨吸収抑制薬は骨の代謝を抑えることで、骨からカルシウムが出ていくことを防いでいます。しかし、それと同時に新しい骨や歯茎などの軟組織を作ることを抑制してしまい免疫応答作用の遅延が起こります。免疫とはウイルスや細菌といった病原体を排除したり、体内の老廃物やがん細胞を処理したり、傷ついた組織を修復したりして体全体の調子を整える機能です。この免疫応答作用が遅れることで感染症に弱い環境になりそこから細菌が感染し、傷が治りにくい、骨が腐るなどの副作用が起こるのです。

 

ちなみに歯科での外科的処置の他に、義歯の不適合や、被せ物の不適合、歯周病、ひいてはむし歯の放置でも顎骨への歯性感染があることもあります。よってビスホスホネートやデノスマブを処方された際にはこれまで以上に口腔内環境を清潔に保つ必要があります。毎食後の歯磨きはもちろんのこと、3~6ヶ月ごとの定期検診がとても大切です。

 

顎骨壊死にみられる症状

以下のような症状がみられ、数字が大きくなるほど重症であることを示します。

ステージ0:原因不明の歯やあごの痛みがある。

ステージ1:歯やあごの痛みに加え、歯の周りの骨が露出してくる。

ステージ2:歯やあごの痛みがあり、骨が見える。細菌に感染して、膿が出てくる。

ステージ3:あごの骨の壊死がすすみ、皮膚に穴があく。痛みが強く、感染により全身の状態が悪くなる。

 

▲歯肉から顎骨が露出しています

 

▲顎骨の壊死が進行し、皮膚に穴があいています

 

 

ただ、顎骨壊死の症状がでたからといって、服用しているビスホスホネートやデノスマブのお薬を勝手にやめることは避けるべきです。なぜなら、元々の病気の進行状態によっては薬の服用をとめることでその病気が悪化する恐れがあるからです。病気によっては顎骨壊死に影響のない別のお薬に変えられることもありますので、必ず主治医の先生に相談するようにしましょう。

 

顎骨壊死の治療方法

初期の場合、口の中の洗浄と抗菌薬で治療します。しかし一度顎骨壊死が起こると自然治癒は困難もしくは長い期間を要します。よって病気が進行している場合、患者さんの全身の健康状態が良ければ、壊死した骨を取る外科的手術を行います。一部の周りの骨も一緒に取ってしまった方が予後は良いようです。

 

もちろん、副作用はまれなもので必ず起こるものではありません。ただし副作用のことを知らず、そして気が付かずに放置してしまった場合、症状が悪化し健康に影響を及ぼす恐れもあります。もしこれらの副作用の信号をキャッチしたらかかりつけの医師、歯科医師または薬剤師にご相談下さい。

それと顎骨壊死の予防としてできることはビスホスホネートやデノスマブが処方される前に歯の治療を終えておくことです。詰め物のメンテンナンスや抜歯など侵襲的な処置が必要な歯が残っているとそれらが顎骨壊死を引き起こす原因になる可能性があるためです。当院のブログでも繰り返しお話しておりますが、こういったことからも歯科での定期検診の重要性がわかりますね。

そしてもう1つ大切なことがおくすり手帳の存在です。歯科での受診の際には持参されない方も多いのですが、今回の薬剤性顎骨壊死のように他の病気で服用されている薬が歯科での処置の際に大きな影響を及ぼすこともございます。当院でも飲み合わせの確認をするため患者様に確認をしておりますが、普段からおくすり手帳を携帯し、歯医者さんに行かれるときもぜひご持参くださいますようお願いします。

 

病気はいつ誰がなるかわかりませんし、その時どんな薬を服用されるかも未知です。治療途中になっている歯がある方や歯科検診を久しくされていない方はぜひこの機会にかかりつけの歯医者さんに行かれてみてはいかがでしょうか。