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アバウトすぎるヒトの痛覚~あなたが痛いのはどの歯ですか?

こんにちは!JR総武線東船橋駅南口ロータリー内にあるビバ歯科・矯正小児歯科の武林です。

 

新型コロナウイルスの感染者数減少により9月末をもって緊急事態宣言が解除されましたね。しかしながら完全に終息したわけではなく、今冬に第6波がくるのではないかというニュースも目にしますので、まだまだ感染対策に気を抜けない日々が続きそうですね。

ところで、コロナに感染すると『“味覚”や“嗅覚”がなくなる』、もしくは『これらの感覚が戻らない』といった後遺症の話を聞きますよね。ヒトの感覚というのは食事を楽しむといった生活を豊かにするだけではなく、危険から私たちを守るという意味でもとても大切な働きをしています。代表的な感覚としては以下の“五感”が有名ですよね。

五感で得られた情報は瞬時に脳に送られ、次の指令が瞬時に下されるようになっており、五感と脳はとても密接な関係にあります。

 

1.視覚(見る)

2.聴覚(聴く)

3.嗅覚(嗅ぐ)

4.味覚(味わう)

5.触覚(皮膚で感じる)

 

ちなみに“敏感で物を見つけ出す能力に長けている人”を「あの人は鼻が利くね」なんて言うように、ヒトの感覚はとても繊細です。ところが、ヒトの体というのは本当に不思議なもので“ちょっと雑でアバウトな感覚”があるのです。本日はこの“ちょっと雑でアバウトな感覚”についてのお話をしていきます。

 

あなたの痛みの場所、正確に言えますか?

先日歯の痛みを訴え当院にご来院された患者さんがいらっしゃいました。その患者さん曰く昨晩から『奥歯が痛む』とのこと。より詳しくお話を伺うと“右側の下の歯、前から数えて6番目“が痛むというお話でした。そこで正確な患部の位置を把握するためにパノラマレントゲンを撮影したところ、患者さんが思わず「えっ!?」と口にしてしまうほどの驚くべき事実が発覚したのです。

 

以下のレントゲンがその時のお写真です。赤枠で囲った箇所がぼんやりと黒くなっているのがお分かりになるかと思います。実はこれう蝕、すなわち“むし歯”です。しかもかなり進行していて“歯髄炎”を起こしていました。

歯髄炎とは、むし歯が進行し歯髄(歯の神経)に炎症が起こっている状態です。むし歯の痛みのほとんどがこの歯髄炎が原因です。治療方法は歯およびその周囲に麻酔を打ち、歯髄(歯の神経)を取り除く歯内療法すなわち「抜髄」をおこなうのが一般的です。そして歯髄が取り除かれた歯の内部の空洞(根管)に再び細菌が侵入しないように、根管内を隙間なく緊密にふさいでいきます。これを根管充填といい、ガッタパーチャと呼ばれる専用の詰め物と、根管内を無菌状態にするための薬剤などを使ってふさいでいきます。これら一連の治療により抜髄した歯の周辺組織の環境は清潔に保たれますが、このような治療がおこなわれた歯は構造がもろくなり、治療後に歯や歯根が破折するといったトラブルがおこることもありえます。そのため、歯髄炎まで進行する前に早期での歯科治療が重要になってくるのです。

 

さて、話をこちらの患者さんに戻します。

冒頭でお伝えした通り、こちらの患者さんの訴えでは、『右下の奥歯(6番目)が痛む』とのことでした。

しかし、実際には6番目は上下共に問題なく、痛みの原因は上顎5番目のむし歯にあったのです。これってすごく不思議ですよね。なぜむし歯とは無関係の他の歯に痛みを感じたのでしょうか?

 

不思議、不思議~痛みの錯覚

みなさんは、“関連痛”というのを聞いたことがあるでしょうか。簡単にいうと、実際の患部とは違う場所に痛みを感じる状態です。代表的なものを以下にあげますね。

  • 「肩甲骨周辺が痛い」→『実際には心筋梗塞や狭心症だった』
  • 「背中や腰が痛い」→『実際には尿管結石や虫垂炎などの内臓疾患だった』
  • 「足がしびれる」→『実際には腰の椎間板ヘルニアが原因だった』

原因となっている部位とは全く違う部位に痛みの症状があらわれるのですから、ヒトの体って本当に不思議ですよね。

そして、ますます定期的な健康診断や、体の異常を感じたときには早期に病院に行く、ということがいかに大切かというのが身に沁みます。

今回の患者さんについてもこの関連痛が原因で痛みの感じる場所を勘違いされたのだとおもいます。そして実はこの勘違いというのは歯科ではよくあることで、特に奥歯で多くみられます。だからこそレントゲンでの確認はとても重要になります。

 

もう少し詳しくこの関連痛のメカニズムをみていきましょう。

 

歯の痛みを感じるためには、脳が認知する必要があります。そして脳に歯の痛みを伝達するのは“三叉神経”と呼ばれる脳神経です。これは脳から3本に大きく枝分かれしていて、以下のイラストのように顔面全体を覆っています。

上から「眼神経」「上顎神経」「下顎神経」です。各領域に広がった神経は末端で痛みを察知し脳に伝達します。しかし、この三叉神経は脳に近づくにつれて1本の神経になるため、どこの末端から情報がきているのかわからなくなってしまうことがあるのです。これが先ほどの関連痛の発端になるのです。ちなみに三叉神経は左右1対になっていて顔面の感覚は左右別々に支配されているため、左右で痛みを勘違いすることはありません。今回の患者さんも上下の歯で錯覚していました。なお、この歯痛の部位の錯覚は歯肉や根尖と呼ばれる歯の根っこの先端部分よりも、知覚過敏や歯髄炎で起こることが多いようです。私自身も知覚過敏でかかりつけの歯科医院にかかったことがありますが、痛みの感じる歯と実際の原因となっている歯は1つお隣だった覚えがあります。あれもきっとこの“三叉神経”の仕業ですね。本当に人体というのは不思議です。

 

ちなみに、ちょっと面白い三叉神経の錯覚の例に“アイスクリーム頭痛”というのがあります。これは言葉の通り、アイスクリームやかき氷などの冷たいものを食べた時に「キーン」とくるあの頭痛のことです。もはや芸がないくらいそのままのネーミングですが、この“アイスクリーム頭痛”は実は立派な医学用語なんです(笑)このアイスクリーム頭痛が起こるメカニズムはいくつか考えられていますが、主に次の2つが有力とされています。そのうちの1つが三叉神経による錯覚です。

 

  1. 冷たいものが喉を通過する際に、喉にある三叉神経が刺激され、この時の伝達信号である冷たさを脳が痛みと勘違いして頭痛が起こります
  2. 冷たいものを食べたとき急激に口の中や喉が冷えてしまうため、ヒトの体は一時的に血流を増やして温めようとします。このとき、頭につながる血管が膨張することから、頭痛が起こります

 

アイスクリームと聞くと真夏に汗をかきながら食べるイメージかと思いますが、実はわたし1年中食べています。おかげで冷凍庫に常時20個ほどのアイスをストックしています…。ちなみにかの有名な「ハーゲンダッツ」のお話ですが、実はこちら他社とは違い最も売れるのが12月とのことで「業界の珍現象」として知られているようです。秋も深まり寒くなってきましたが、「秋冬限定のアイスクリーム」も発売されますのでアイス好きとしてはワクワクしますよね。ぜひキーンという痛みを感じることなく美味しくアイスを食べたいところです。そこで最後にアイスクリーム頭痛にならないように美味しく食べられる方法を伝授します。方法はとっても簡単です。それは

 

『時間をかけて、ゆっくりゆっくり食べること』

 

これにつきます。

時間をかけて食べることで、喉を冷やすスピードが抑えられ神経への刺激や血管の膨張を緩やかにすることができるのです。アイスクリームを食べる際にはぜひ試してみてくださいね。