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意外なところで歯の痛み~航空性歯痛

こんにちは。千葉県船橋市東船橋にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

夏休みやお盆の季節が近づき、旅行の予定を立てている方も多いのではないでしょうか。せっかくのレジャーを思い切り楽しむために、今日は【旅行の前に知っておきたい歯の話】をしたいと思います。

5分ほどで読める内容ですのでぜひご覧くださいね。

 

気圧の変化が歯の痛みを呼び起こす

歯科用語で「航空性歯痛(こうくうせいしつう)」という言葉があります。その名の通り、飛行機に乗った際に起こる歯の痛みのことです。これには“気圧の変化”が関係しています。

気圧の変化というと、台風の接近で頭痛がひどくなる天気痛(気象病)や、飛行機に乗って離陸するときに耳がキーンと痛くなることなどを思い浮かべるかと思います。実は私たちの歯の中でもこれらと同様の現象が起きているのです。

そもそも気圧とは?

気圧とは気体の圧力のことで、天気の話をするときには一般的に大気圧のことを指します。更に簡単にいうと気圧とは “空気の重さ”のことです。無色透明で目にみえない、しかも普段は重さなんて感じない空気ですが、実際にはしっかりと“重さ”があります。具体的には空気1リットルでおよそ1.2g*です。食塩が小さじ1杯で約6gですから、大した重さではないと言ったらそれまでですがそれでもこの“空気の重さ(気圧)”はしっかりと私たちの体に影響を及ぼします。ヒトはあらゆる方向からこの気圧の影響をうけているのです。ただそう考えると『それじゃ、ヒトは空気に押しつぶされてペチャンコになっちゃうのでは・・』と心配になりますよね。でもそんなことはありません。なぜなら外側から受けている気圧と同じ力でヒトの体の内部からも押し返しているからです。

中学生時代に理科の授業で学んだ方も多いと思いますが少し思い出してみましょう。空気の重さである気圧というのは標高が高いほど下がります。なぜなら標高が高いほど上にある空気の量が少なくなるからです。以下のイラストをご覧いただくと一目瞭然ですね。

*空気の重さは、温度や湿度によって変わる。標準空気(20℃、湿度65%、1気圧)の1リットルの重さが約1.2g…[ダイキン工業株式会社のHPより引用]

 

ヒトの体はポテチと同じ?

先ほどお話したとおり、本来は外側からの気圧と体内からの気圧がバランスをとって打ち消し合っています。ただし、標高が高いところに行くとそのバランスが崩れるのです。ここで思い出されるのがポテトチップスの袋のお話ですね。『富士山に登るとポテトチップスの袋が膨らむ』というのを一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

ちなみに実はヒトの体内でも同じことが起こっています。例えば人の血管です。

気圧が下がると体の外から押す力が小さくなるため、血管内が膨張すなわち血管内から押す力が大きくなります。そこで通常であれば自律神経の働きにより血管を収縮させバランスをとります。ところが自律神経の乱れなどによりその働きが鈍っていると体に不調をきたすのです。また、まだ未解明な部分もありますが片頭痛は血管の膨張が原因の1つとも言われています。膨らんだ血管が神経に作用して痛みを引き起こすというものです。

 

航空性歯痛が起こる理由

ここから歯のお話に戻ります。航空性歯痛は健康的な歯であれば痛みを感じることはありません。むし歯や治療中の歯に痛みがあらわれます。それは先の血管のお話と同じく、気圧の変化で歯髄(歯の神経)が刺激を受けるからです。下のイラストをご覧ください。歯の内側には歯髄(歯の神経)が入っている空洞があり、これを“歯髄腔”(しずいくう)といいます。イラストの緑色で囲まれている部分が歯髄腔です。通常この空洞の中は外の気圧と一緒になるように保たれています。しかし、飛行機に乗った際など急激な気圧の低下が起こると歯髄腔の中の圧力が上昇し歯髄を圧迫します。それで痛みがでるのです。更にむし歯によって歯に穴が空いている場合はより痛みが強くなることもあります。また鼻のすぐ横あたりには“上顎洞”という空洞が存在しており、この空洞が膨張することも歯の痛みを引き起こす要因となります。

どんな歯が痛む可能性があるか

航空性歯痛が引き起こされるのは、むし歯や治療中の歯です。

1.むし歯のある歯

むし歯は英語でカリエス(caries)といい、その進行度を表すのに1~4までの番号をつけます。数字が大きくなるほど進行度が高くなります。C1はエナメル質のむし歯で歯の表面に穴はあいていますが通常痛みなどの自覚症状が現れることはありません。しかし気圧の変化により痛みがでる場合があります。またむし歯の中でももっとも強い痛みや不快感がある段階のC3では個人差はありますが更に痛みが増す可能性があります。逆にC4までいくと痛みを感じる歯髄が完全に蝕まれてしまい痛みなどの症状は消失しています。

2.根管治療中の歯

根管治療とは歯の神経にまで達したむし歯に対する治療のことです。先ほどのC3,C4が対象となります。まずは死んだ神経を取り除き、次に歯の神経が通っていた根っこ部分(根管)の中を徹底的に洗浄・消毒、そして最後に薬剤を詰めて神経の穴を埋めていきます。根管内は細かく分岐しており治療には時間と根気が必要です。個人差はありますが、確実にいえることは1度の治療では完結しないということです。そのため、根管治療⇔仮封(仮の蓋)を繰り返していきます。仮封は神経を抜いたあとにその空洞に余計なものが入らないようにする仮の蓋です。そうすると薬剤をつめる前の段階では、根管内に空洞すなわち空気が存在することがあるため、気圧の変化によって空気が膨張し、神経を圧迫して痛みがでることがあるのです。しかし、場合によっては仮封をせず内圧がかからないように出口を作ったり、サンダラックという通気性のある仮封材で内圧の開放をしたりすることもあります。根管治療中に飛行機に乗らざるを得ない場合などはかかりつけの歯医者さんに相談されることをおすすめします。

3.親知らずの生えかけや抜歯後

個人差はありますが、生えかけの親知らずがある場合、気圧の変化で痛みが出る場合があります。また親不知の抜歯後にも痛みがでることがあるので注意が必要です。

なお治療をすでに終えた歯でも、詰め物や被せものをした部位に隙間(空気)があると、気圧の変化により膨張し痛みがでる可能性があります。

 

航空性歯痛の対処方法

一番良いのは、『飛行機に乗る前にすべての治療を終えておくこと』です。これは飛行機に乗る乗らない以前に健康のために必要なことでもあります。しかし、仕事や冠婚葬祭などどうしてもスケジュール調整が難しい場合がありますよね。そんなときは以下の対処法をお試しください。

鎮痛剤を服用する

完全に痛みがなくなるまではいかなくてもある程度痛みを軽減することは可能です。治療中の方であればかかりつけの歯医者さんに事情を説明し鎮痛剤を処方してもらいましょう。もしくはドラッグストアでも手に入れることができますね。また搭乗中に痛みがでてしまい鎮痛剤の持ち合わせがない場合には航空会社の客室乗務員さんに事情を説明すれば鎮痛剤をもらえる場合があります。ちなみにこちらのJAL日本航空さんのホームページでは「機内で発生しやすい症状とその対処法」として、歯の痛みについて書かれています。他の体の不調についても掲載されておりますので、旅の前に目を通しておくと参考になりそうです。

仮眠をとる

眠っている間は痛みを感じにくくなります。そのため、搭乗中は機内で仮眠をとることも有効です。

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これからの夏のレジャーシーズンで飛行機に乗るという方もいらっしゃるかと思います。そんな中「歯が痛い…」となってしまっては、楽しい時間も楽しくないですよね。もし今旅行等の計画をたてている方がいらっしゃいましたら、まずは「歯医者さんの予約」もその計画の最初に入れて下さいね。