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カレーで歯周病予防!?

こんにちは。ビバ歯科・矯正小児歯科です。

突然ですがみなさんカレーの色素って何かご存じですか。あの食欲をそそる黄色を出してくれる色素の名前、それは“クルクミン“です。いかにも可愛らしい名前のこのクルクミンですが、実は素晴らしい性質を持っているんです。それは歯周病の予防になる、というもの。

 

これを読んで『ビバ歯科さん、どうしたの…?』と思った方が多いと思います。ぜひ騙されたと思って最後までお付き合い下さいね。

 

歯周病は人類史上最大の感染症

まずは歯周病についておさらいしましょう。

ここ数年全世界の生活を一変させてしまった感染症として新型コロナウイルスがありますが、歯周病も全世界で蔓延し、日本人においては成人の8割が感染していると言われています。また歯周病菌はお口の中だけにとどまらず全身疾患、例えば心臓病、肺炎、糖尿病、そして認知症などを悪化させる要因にもなると言われているのです。

 

そしてご存じの方も多いかもしれませんが、歯周病は進行とともに歯がグラグラしてきて、最悪の場合歯が抜け落ちてしまいます。そういったことから、歯周病は「歯の病気」と勘違いされがちですが、歯の病気ではありません。歯周病はその名の通り、歯の周りの組織の病気です。これらは歯周組織と呼ばれ、具体的には歯ぐきや歯槽骨(骨)など主に歯を支える役割をしている組織です。この歯周組織を歯周病原菌が攻撃し、歯ぐきの下にある歯槽骨を溶かしていきます。歯槽骨が溶けるとますます歯周ポケットの溝が深くなるため、歯周病原菌が更に増殖し住みつくという悪循環に陥るのです。

 

ただし、この歯周病原菌ですが実は常在菌です。つまりお口の中が健康な方にも存在する菌なのです。そのため基本的にはヒトの健康に害を与えず共生関係にあるものです。しかし、免疫力の低下や口腔内環境の悪化など一定の条件が整うと歯周病原菌が暴れだし、歯周病を発症します。

 

歯周病原菌の極悪3兄弟

歯周病に関わる菌は数十種類ありますが、その中でも特に極悪なのが次の3つの菌です。

 

  • ポルフィロモナス・ジンジバリス (Porphyromonas gingivalis)…P.g.菌と表記
  • タネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)…T.f.菌
  • トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola) T.d.菌

これら3つの歯周病菌はいずれも血液を好む性質からレッドコンプレックスとも呼ばれています。レッドコンプレックスは歯を支える歯周組織を破壊するだけではなく、血管内に侵入して全身を巡り、血管の老化を引き起こします。その結果全身疾患(糖尿病・心臓病等)を引き起こすのです。

そしてこの中のボスがポルフィロモナス・ジンジバリス (P.g.菌)です。歯周病原菌のうちもっとも病原性が高い菌です。

 

最強にして最恐のP.g.菌

P.g.菌が最も恐ろしいと言われるのは、他の菌にない恐るべき性質があるからです。以下に紹介します。

 

バイオフィルムの病原性を高める

バイオフィルムとは細菌が形成する生物膜で、歯垢がその典型例です。他にも台所の流し場や花瓶の内壁にみられるヌルヌルとした粘着物はすべてバイオフィルムです。お口の中には普段は無害でおとなしい菌**もいますが、それらの菌もP.g.菌がいると悪さをするようになります。その結果バイオフィルム全体の病原性が高まり歯周病を発症するのです。

**日和見菌…普段体が健康なときはおとなしいが、体が弱った時などに悪い働きをするようになる菌。代表的な日和見菌は大腸菌、連鎖球菌など。

 

タンパク質なら何でも分解する

P.g.菌が分泌する「ジンジパイン」という酵素はどんなタンパク質でも分解・消化していきます。ヒトの体を構成する成分のうちおよそ6割は水分ですがタンパク質も2割近くを占めますから、水分を除く固形分のうち、およそ半分をタンパク質が占めていることになります。このタンパク質が分解されるということはヒトの細胞が傷つけられるということです。

2019年に九州大学が『重度歯周病の罹患と認知機能低下が正相関する』という研究結果を発表しました。つまりこれは「歯周病患者は認知症になる可能性が高くなる」ということを示唆しています。

なお近年、米国のCortexme社は認知症予防のためジンジンジパイン阻害剤を開発し臨床実験をしています。

 

毒素を合成する

P.g.菌は嫌気性菌であり、酸素の“ない”場所を好みます。そしてこの嫌気性菌は毒性のある揮発性硫黄化合物を合成します。これはヒトの体を守るために働く白血球などの免疫からP.g.菌自身を守る為に働きます。つまり白血球の活動を阻害してしまうのです。

ちなみに揮発性硫黄化合物は悪臭のあるガスが主な成分で、口臭の原因にもなります。

 

出血があるほど強力になる

P.g.菌は血液中の鉄や血清をエサにして、ますます力を増していきます。鉄は血液の成分である赤血球のヘモグロビン内にありますから、炎症があり歯ぐきに出血がある部位や深くなった歯周ポケットをP.g.菌が好むのはこのためです。

 

とにかくしぶとい

歯医者さんで歯垢・歯石の除去をしてバイオフィルムを壊しても、P.g.菌はしぶとく生き残ります。

なぜならP.g.菌は歯ぐき以外に、舌の表面や頬粘膜の細胞の中にも侵入し生き延びることができるからです。細胞の中に侵入する能力に長けているP.g.菌は細胞近くの毛細血管の壁をすり抜けて、血管内に達し血流によって全身に運ばれます。歯周病が様々な臓器で疾患を引き起こすことが指摘されているのはこの性質のためです。

 

P.g.菌にも天敵がいた!

ここまでの説明だけですと、「もう歯周病になったら終わりだ」と思われた方も多いかもしれません。確かに歯周病はサイレントキラーとも呼ばれ、本当に怖い病気であることは間違いありません。しかし、実は最強で最恐とも思えるこのP.g.菌にも天敵がいることがわかってきました。その天敵の名前は“クルクミン”。

そうです、当ブログの冒頭でお話したカレーの色素でもある“クルクミン”です。

 

クルクミンとは、ウコン(ターメリック)として知られるショウガ科の植物に含まれるポリフェノール成分です。ウコンと聞くと二日酔いの予防としてのイメージが強いかもしれませんが実は他にも私たちの体を助けてくれる素敵な働きがたくさんあるんです。

 

~クルクミンの働き~

  • 抗炎症作用・・・炎症を鎮める
  • 抗菌作用・・・菌の増殖を抑える
  • 抗腫瘍作用・・・がん細胞の増殖を抑えたり、がん細胞を死滅させたりする。
  • 抗酸化作用・・・体が酸化して老化するのを抑える。釘が酸化して錆びついたり、りんごが酸化して変色したりするようにヒトの体も酸化によりシミやシワなどの肌トラブルが出たり、 生活習慣病などになったりすることがあります。

 

クルクミンの抗菌作用により、クルクミンに触れたP.g.菌はたちまち増殖を抑えられ、バイオフィルムの形成や歯周組織への攻撃も止められてしまいます。さらに、クルクミンはP.g.菌が細胞内に侵入することも阻害するなど多彩な作用を発揮することが明らかになってきています。

 

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現在歯周病で悩んでいる方、今晩の夕食にクルクミンが豊富なカレーライスはいかがでしょうか?

ただし、カレーのような色の濃い食べ物は歯の着色の原因となります。またもちろんカレーを食べているだけで歯ブラシをしなくても良い、だなんてことは絶対にありません。ご注意下さい。