ブログ・むし歯(一般歯科)
大人のむし歯『再発むし歯』
こんにちは。千葉県船橋市東船橋にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。
先日のブログで大人になるとなりやすいむし歯として“根面う蝕”を紹介しました。そして今回も引き続き大人のむし歯について取り上げたいと思います。それは二次う蝕(二次カリエス)です。いわゆる“再発むし歯”のことです。これは過去に歯科治療を行った詰め物や被せ物の隙間からむし歯菌が浸入し、再度むし歯になることを言います。特に働き盛りと言われる40~50代の方に増えてきているという調査結果もありますので該当の年齢の方にはぜひ今回のブログを参考にお口のケアをしていただければと思います。
目次
はじめに・・8020運動の効果
みなさん、「8020(ハチ・マル・二イ・マル)運動」を聞いたことはありますか?これは『80歳になっても自分の歯を20本以上保とう』という運動で、1989年に当時の厚生労働省と日本歯科医師会が推進し始めました。20本以上の歯があれば食生活にほぼ満足することができると言われているため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動は始まりました。
さて次のグラフをご覧ください。こちらは平成28年に実施された最新の「歯科疾患実態調査」です。これによると80歳で自分の歯が20本以上残っている高齢者、すなわち8020達成者の割合は51.2%になり過去最高の数値となりました。
この8020運動の普及以外にも高齢者が自分の歯を多く残せるようになった要因は歯に対する健康意識が高まったことが挙げられます。具体的には「1日3回以上歯を磨く人が増えたこと」、「歯科での定期検診を受診する人が増えたこと」、「様々なオーラルケアグッズをセルフケアで取り入れる人が増えたこと」などです。
しかしながら冒頭でもお伝えした通り“再発むし歯”を経験した人たちの割合は増えています。なぜなのでしょうか。
再発むし歯の原因
繰り返しになりますが、再発むし歯とはむし歯治療をした歯が再びむし歯になることを言います。でも、歯の専門家である歯医者さんで治療してもらったはずの歯です。どうして再発してしまうのでしょうか?以下に代表的な例をあげていきます
詰め物や被せ物にできる隙間
むし歯を治療した後にできる詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)と歯の間、被せ物と歯肉間などには時の経過とともに少しずつ隙間ができるようになります。いわゆる経年劣化です。またこういった詰め物などを歯に固定するための歯科接着剤も経年劣化が起こり歯と歯科接着剤の間にも隙間ができます。そしてこれら微小の隙間にはむし歯の原因となる歯垢(プラーク)が非常に溜まりやすくなります。この歯垢の中にはむし歯の原因菌であるミュータンス菌がいて、大きさが数ミクロンという小ささのため目では見えないような隙間でさえ入り込み、歯をむし歯にしていくのです。また無意識のうちにギシギシと強い力で上下の歯を噛み合わせる歯ぎしりや食いしばりも詰め物や被せ物に大きなダメージをもたらし破損し隙間ができる原因にもなります。
抜髄した歯のケアをしていないこと
抜髄とは歯の神経を抜くことです。歯の神経には歯に栄養を届けることの他、痛みを感知してむし歯になっていることを知らせる大切な役割があります。そのためできる限り神経を残すよう治療を進めていくのですが、むし歯が大きく神経に達している場合や神経そのものが腐敗している場合には止む無く神経を抜くことになります。ところが神経を抜いた歯は栄養が行き届かないためもともとの歯に比べて大変もろく、むし歯や破折のリスクが高くなってしまいます。そのため、神経のある元々の歯以上の入念なケアが必要になります。しかし、患者様の中には「どの歯の神経を抜いたか覚えていない」という方もいて、そういった歯に対する意識が低いのが現状です。
唾液の分泌量が減少したこと
普段無意識に出てきては飲み込む唾液。実はこの唾液の分泌量の減少がむし歯の発生に影響します。むし歯の原因となるプラーク(歯垢)は食べ物に含まれる糖分を餌にして酸を作り出しそれが歯を溶かします。しかし唾液にはこのプラークが作り出す酸を中和し溶けかかった歯の表面を修復する働きがあります。これを唾液の“再石灰化作用”といいます。さらに、歯や歯間に付着した食べかすやプラークを洗い流す“自浄作用”、飲食後に酸性に傾いたお口の中のPHを中和させむし歯になりにくいようにする“PH緩衝作用“、お口の中の細菌の増殖を抑える“抗菌作用“など唾液はお口の中の清潔を維持する様々な働きがあります。しかし、唾液の分泌量が減少するとこれらの働きが弱くなりお口の中はむし歯になりやすい環境になってしまうのです。
ではなぜ唾液の分泌量が減るのでしょうか。いわゆるドライマウス(口腔乾燥症)には以下のような原因が考えられます。
▼加齢
お口の周りの筋肉や歯の衰えなどから咀嚼力の低下や唾液腺の機能低下
▼ストレス
唾液腺は自律神経に支配されています。過度なストレスを感じると交感神経が強く働き唾液の分泌量が抑制されます
▼生活習慣
食べ物をよく噛まない早食い、喫煙、飲酒などの影響。
▼薬の副作用
精神安定剤、鎮痛剤そして血圧降下剤などの副作用
▼病気や治療
シェーグレン症候群(唾液腺や涙腺などが萎縮して目と口が乾燥する自己免疫疾患)、腎臓病、糖尿病、そして口腔周囲の放射線治療などの影響
▼口呼吸
お口の中の水分が蒸発し乾燥します
今日からできる“大人むし歯”の予防法
大人むし歯である再発むし歯を予防するには毎食後のセルフケアがとても大切です。
プラークの除去
繰り返しになりますがむし歯の原因は歯に付着するプラーク内のミュータンス菌です。そして詰め物や被せ物など歯の治療をした部分には必ず段差ができます。そうしたところにはどうしてもプラークが溜まりやすくなっていますので、治療した部分は特に入念に歯みがきをするようにしましょう。その際通常の歯ブラシだけではなく、ワンタフトブラシやデンタルフロスの併用をおすすめします。歯ブラシだけでは届きにくい奥歯や歯と歯の間までキレイにすることができますよ。
ワンタフトブラシ…歯ブラシよりも毛の本数が少なくヘッドも小さめです。「1歯用ブラシ」、「ポイントブラシ」などとも呼ばれています。詰め物と歯の境目、奥歯、歯が重なっている部分など通常の歯ブラシでは毛先が届きにくいところにも効果的です。
デンタルフロス…細い繊維を束ねて糸状にしたもので、歯と歯の間の狭い隙間に通してプラークをかき出すことができます。歯ブラシとの併用で歯と歯の間のプラーク除去率が格段に上がりますよ。
フッ素を含んだオーラルケアグッズの利用
以前のブログでもご紹介したように、フッ素には歯質を強くしてむし歯を作りにくくする働きがあります。当院でもフッ素を含んだケアグッズを多数取り扱っており、種類も様々です。例えば、歯磨き粉同様に歯ブラシにのせてブラッシングするジェルタイプや、ぶくぶくうがいをするだけの洗口液の液体タイプがあります。当院では治療の際に患者様に試していただき、症状や使用感の好みによって使い分けられるようにしています。
なおここまでは患者様ご自身でのセルフケアによる予防法をお伝えしましたが、あとはやはりかかりつけの歯科医院で定期検診を受けることが大切です。というのも、どんなに丁寧にセルフケアをしても、磨き残しは発生するものだからです。そのため歯のプロによるクリーニングでプラーク除去、歯石とりが必須になります。また歯医者さんで診てもらうことで“再発むし歯”やその他のお口の中のトラブルも早期発見早期治療をすることができます。
最後に…
歯科治療を受けた歯には必ずダメージが残ります。そのせいで歯の寿命が縮まることも少なくありません。特に、一度治療して神経を取ってしまった歯の場合、むし歯が進行しても痛みがないために早期発見が難しいこともあります。また、一度治療した部位は、再度むし歯が発生すると神経に達しやすく、「気が付いたときには詰め物や被せ物の下でむし歯が広がっていて、抜歯をするしかなかった」というケースも中にはあります。
働き盛りと言われる40~50代のみなさん。日々お仕事や生活でお忙しくされていることと思いますが、一度自身のお口の中の状態をじっくりみてあげましょう。そして今日から入念なオーラルケアを始めてあげましょう。それが未来の自分に対する健康という名のプレゼントになりますよ。