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親知らずって抜く?抜かない?

こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

今日は“親知らず”のお話をします。

 

ある日急に痛みをもたらすこともある“親知らず”ですが、みなさんは親知らずに対してどんなイメージをもっていますか?おそらく次にように考えている方が多いのではないでしょうか。

「急に痛くなるやっかいな歯」

「中途半端に生えてくる歯」

「そもそもいらない歯」

 

そして

「抜いた後は顔が腫れる」等々

あくまで筆者の勝手なイメージですが、患者様とお話していても親知らずに対してはネガティブなイメージをもたれる方が多いように感じます。たしかに、お口の中に痛みをもたらしたり、むし歯のリスクがあったりする親知らずについては抜いたほうが安心です。しかし、親知らずだからと言ってすぐに抜こうとするのは時期尚早です。実は抜かなくて良い親知らずもあるんです。そこで、「その親知らず、抜くべきか抜かないべきか」について考えていきたいと思います。ぜひ最後までお付き合い下さいね。

 

そもそも親知らずって何?

親知らずとは永久歯の中でもっとも奥にある歯のことです。前から数えると8番目に位置し、正式名称は第三大臼歯です。ちなみに余談ですが、英語では“wisdom tooth”と言います。wisdomは「知恵、賢い」という意味ですから、何か誇らしげな響きがありますね(笑)一般的に親知らずは10代後半以降に生えてくるため、分別のつく年頃という意味で“智歯” (ちし)とも呼ばれています。

ところで、この“親知らず”という名称ですが、なぜそんな呼び名が付いたのでしょうか。いくつか由来があるようです。

 

日本人の平均寿命が短かった

第三大臼歯(親知らず)が生えてくるのは一般的に10代後半から20代前半頃です。昔の日本人は寿命が短く、第三大臼歯(親知らず)が生えてくる頃には親は既に亡くなっていることが多かったため“親知らず”と呼ばれるようになった、という説。

親が知らないところで生える

お子様が幼い頃は、親がお子様の歯を仕上げ磨きまでされますよね。しかし、第三大臼歯(親知らず)が生えてくる頃になると親がお子様の歯を磨いたり、見たりする機会がありません。よって、親が知らないところで生えるため“親知らず”と呼ばれるようになった、という説。

第三大臼歯に相当する乳歯がない

乳歯を「親」、永久歯を「子」に見立てたときに、親知らずは相当する乳歯がありません。永久歯に生えかわる際に新しくその場所に生えてきます。そのため、「親」(乳歯)を知らずに育つ「子」(永久歯)という意味で “親知らず”と呼ばれるようになった、という説。

 

ちなみに親知らずは全部生えれば上下左右で計4本あります。しかし、みなさんご存じのように親知らずが生涯生えない場合もあります。それが以下のような例です。

 

①歯肉の中に存在はするが、埋まっている状態(もしくは少しだけ生えている状態)
本当は存在するけれども歯肉の中に隠れているため肉眼では“ない”状態をいいます。このように歯肉の中もしくは骨の中に埋まったまま出てこない歯のことを埋伏歯といいます。埋伏歯については以前のブログ『お子様の永久歯、全部そろっていますか?~埋伏歯の存在』で詳しくお話していますので参考にして下さい。

②存在自体がない
そもそも親知らずという歯がない状態です。歯は歯の元になる歯胚(しはい)という種が成長して作られます。しかしこの歯胚がないと歯は成長できません。すなわちその部分は歯が“ない”ということになります。いわゆる先天性欠如歯です。これは病気ではなく、形成異常の1つです。

 

ところで、今このブログを読んで下さっている方がもっとも気になっているのはこの①ではないでしょうか?「歯肉の中に埋まっている親知らず」、「少しだけ顔を出している親知らず」、自身の親知らずが今後どうなるのか、すなわち抜くべきか抜かないべきか。この後書いていきますね。

 

こんな親知らずは抜きましょう

簡単にいえば、親知らず自体もしくはその周囲に“悪影響”を及ぼす親知らずです。こういった場合には抜くことで口腔内の衛生環境が保持できます。具体例をあげていきますね。

繰り返し親知らずの周囲の歯肉が腫れる場合

親知らずの周りに汚れが溜まると細菌感染により炎症を引き起こします。いわゆる智歯周囲炎です。これが悪化すると顔まで腫れて口を開けにくくなり食事が摂れないほど重症化します。さらにひどくなると発熱や倦怠感など全身に症状が広がり、喉の痛みで水を飲むのも難しい状態になることがあります。特に歯肉の腫れは風邪を引いていたり疲れていたりなど全身の抵抗力が低下しているときに炎症が急激に進みます。歯医者さんへの受診はもちろんですが栄養管理と休息も大切にして下さい。

中途半端に生えている場合

少しだけ頭が生えている親知らずってありますよね。この場合、食べ物が挟まりがちであったり、汚れがたまりやすくなったりしていて、むし歯や口臭のリスクが高くなります。そのため他に理由がない限りは抜いてしまった方が安心です。

咬み合う歯が存在しない場合

下の親知らずが埋伏していて、かつ上の親知らずが正常に生えている時を考えてみましょう。本来上下の歯は咬み合うことで互いが定位置に収まっていますが、咬みあっていないと上の親知らずがどんどん下に伸びてきて、下の歯肉にあたるようになります。するとそこの歯肉を上下の親知らずで噛んでいる状態になります。歯肉は柔らかい粘膜ですから噛めば痛いですよね。また飛び出て生えている上の親知らずが頬粘膜を噛んで傷つけてしまうこともあるので、咬み合う歯がない親知らずは抜いてしまった方が安心です。

【症例写真】
こちらのパノラマ写真をご覧下さい。「8」と書いてあるのが前から8番目の歯、すなわち親知らずです。Before写真では上下左右4本の親知らずが真っすぐ生えています。しかし右下の(パノラマ写真では左右逆に写ります)親知らずを抜歯後に、右上の親知らずがグングンと下に向かって伸びています。このように咬み合う歯がないとその空間に向かって歯が出てきてしまうのです。専門用語ではこのことを挺出(ていしゅつ)と呼びます。

右下8番(親知らず)を抜歯後の経過です。咬み合う歯がなくなった右上8番(親知らず)が空いた空間に向かって伸びています。

 

歯並びに悪影響を及ぼしている場合

親知らずが斜めや横に向かって生えてくると、手前の歯を押すために歯並びを乱すことがあります。歯並びが悪くなると見た目はもちろん、咬み合わせも悪くなるためこのような親知らずは抜いてしまった方が安心です。

 

【症例写真1】
左上の親知らずを抜歯したものの、上下共に歯列が乱れています。8番(親知らず)が後方から押していて歯列の並びに変化を与えていることがわかります。特に下顎の6番7番の歯根の位置関係をみると移動の様子が顕著です。

【症例写真2】
こちらは左下の親知らず(8番)です。半埋伏の状態で横向きに生えており手前の7番を押しています。そのため、7番の生え方が徐々に直立に変わってきていますね。さらに、7番の移動により6番との歯の隙間が小さくなっていき3枚目のお写真では7番と6番の歯根部分がくっついてしまっているのが分かります。こうなると7番、6番の両方の歯に負担がかかりダメージが蓄積していきます。

 

手前の歯の歯根吸収を誘発している場合

“歯根吸収“とは歯の根っこの部分が溶かされたり短くなったりすることで、その原因の1つが過度な力が加わることにあります。例えば、歯ぎしりや食いしばり、矯正治療の副作用としての歯根吸収です。そしてこれらと同様に親知らずが手前の歯(第2大臼歯)を押すように生えている場合には注意が必要です。歯根吸収を起こすリスクがあるためこのような親知らずは抜いてしまった方が安心です。

【症例写真】
左下に8番(親知らず)が完全埋伏し、しかも手前の7番の歯根部分に侵入し”歯根吸収”を起こしています。アップの写真をみるとよく分かりますが、7番の歯根が溶かされてなくなっていますよね。そのため7番の歯を支える歯根部分が短くなり顎骨に踏ん張ることができなくなってしまいます。これが重症化すると歯がグラグラになったり、歯周病になったときに歯が抜けてしまったりするリスクがあがります。

 

抜かなくてもOKな親知らず

親知らずが上向きにまっすぐ生えていて、上下の咬み合わせに問題がなく、かつむし歯にもなっていない場合は、抜かなくても問題ありません。また、親知らずが完全に顎の骨の中に埋まっていて将来的に生えてくる可能性が少ない場合も抜かなくても問題ありません。ただし、親知らずは一番奥に生えていて歯磨きが届きにくい場所でもあります。毎日のセルフケアと歯医者さんでの定期的なクリーニングは欠かさないようにして下さいね。

 

さて今日は親知らずを抜くべきか抜かないべきかについてお話してまいりました。よっぽど正常に生えている親知らずをのぞいて抜いてしまった方が不安要素は1つなくなります。しかし、「抜かないリスク」だけではなく「抜くリスク」も伴います。というのも、親知らずの位置によっては上顎洞や下歯槽骨神経への影響もあるからです。今回抜く抜かないの例をあげましたが、実際には治療の必要性の有無について患者様ご自身で判断されるのは難しいと思います。よって、もし今親知らずが生えかけていたり、奥歯に鈍いお痛みなど症状があるあればぜひ一度当院までご相談ください。レントゲン写真やCT写真をもとに一緒に治療方針を考えていきましょう。