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のどちんこって、役にたつの?
こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。
鏡にむかってお口を「アーン」と大きく開けてみてください。お口の奥にダラリとぶら下がる“何か”が見えますね。そう、のどちんこです。もしかすると「〇年ぶりに見た!」という方もいらっしゃるかもしれませんね。実際に筆者もこのブログを書くにあたり久々に目にしました(笑)。そこで疑問なのですが、そもそものどちんこって何かの役に立っているのでしょうか?ビジネスではぶら下がり社員などと言う言葉もありますが、のどちんこも「ただぶら下がっているだけでは…」なんて思いませんか?
しかし実は、私たちの生活を支える大役を担っています。例えば、のどちんこがあるおかげで私たちは快適に食事をすることができるのです。今回はややニッチなテーマですが、ぜひ最後までブログをお読みいただけると嬉しいです。

のどちんことは?
のどちんこの正式名称は口蓋垂(こうがいすい)と言います。口の奥の方にぶら下がっているものですが、その位置関係をもう少し詳しくみていきましょう。
※本ブログでは一般的に馴染のある俗称“のどちんこ”を使用します。

◆やってみよう◆
上の前歯の裏側に舌の先端をピタっと付けてください。そしてそのまま上顎(口の天井部分)をゆっくりとなぞってみましょう。骨の硬さを感じながらそのまま喉の方に向かって舌を動かしていきます。するとしばらくしたところで舌先の感覚が変わりませんか?軟らかくなりましたよね?この軟らかく部分は軟口蓋(なんこうがい)と呼ばれる部分で骨がないので軟らかく感じます。軟口蓋は筋肉のかたまりでその最後方についているのが口蓋垂すなわち“のどちんこ”です。
※口の天井部分全体を口蓋(こうがい)と言い、鼻腔と口腔をわけています。
※口蓋の硬い部分は硬口蓋(こうこうがい)と言います。
のどちんこの役割

のどちんこの主な役割は次の3つです。
飲食
お口から入った食べ物は、咽頭(いんとう:喉のこと)を通過後、食道を通って胃にいきます。ところで咽頭は鼻腔とも繋がっておりそこから空気を取り入れていますよね。そのため通常はのどちんこがぶら下がって気道を確保しています。しかし、このままでは食べ物や飲み物が鼻腔に入ってしまいます。「鼻から牛乳がでた!」なんてことを耳にしたことがありますが、まさにあの状態です。そこで飲食物を飲み込む瞬間に鼻からの空気の通り道を遮断する必要があります。この役目をしているのが“のどちんこ”です。のどちんこは軟口蓋と連動して瞬間的に持ち上がり飲食物が鼻腔に逆流するのを防いでくれるのです。静脈にある弁のようですね。なお咽頭の先は食道と気管に分かれています。そのため、のどちんこが鼻腔側を遮断すると共に喉頭蓋(こうとうがい)が気管の入口を閉じて気管内に飲食物が入らないようにしています。こう考えるとのどちんこって偉大な役割を担っていますよね。
ちなみに多くの方が経験済かと思いますが、食事中にむせたことはありませんか?あれは飲食物が誤って気管に入ったこと(いわゆる誤嚥)が原因で起こります。お口や喉周辺の筋肉が弱まっている人にみられる症状です。特に高齢者の場合、誤嚥性肺炎につながり生命を脅かすこともあるため注意が必要です。
呼吸
ビバ歯科のブログでも繰り返しお話ししていますが、人の正しい呼吸は鼻呼吸です。鼻から入った空気は咽頭→気管へと入り、肺まで送られます。この鼻の穴から肺までの空気の通り道を気道といい、通常はのどちんこがぶら下がっていることで気道を確保しています。
発声
のどちんこの役割である飲食・呼吸のことを考えると、「鼻腔と口腔を完全に閉鎖すればいいのに・・」と思いませんか?すなわち、「鼻から肺へ“空気”を」、「口から胃へ“食べ物”を」と完全に通り道をわけるのです。そうすればむせるなんて苦しいこともなくなりそうですよね。しかし、こうしてしまうと人は口から言葉を発せなくなります。なぜならのどちんこは発声を助ける役割もしているからです。ちなみに、主に発声を司る器官としては声帯ですが、ここで発せられるのはあくまで「音」であり、「話し言葉」ではありません。声帯でつくられた音を音色に変えるために、人は唇や舌の形を絶妙に変えたり、鼻腔や口腔で共鳴させたりするのです。
◆やってみよう◆
例えば「だ」と発声してみてください。どうですか?簡単ですね。
続いて、「だ」の音が出る直前で動きを止めてみましょう。すると口蓋(お口の天井)に舌がくっついていますよね。さらにそのまま舌の位置を維持した状態で鼻から息をしてみてください。ムリですよね?呼吸ができず苦しくなるはずです。このことから「だ」の出すためには、のどちんこが上にあがり鼻腔側の気道を塞いでいるのがわかります。
余談ですが、地声と裏声を出すときの”のどちんこ”の動きを眺めてみると面白いです。地声の時にはぶら下がったままののどちんこですが、裏声を出すときには上方向に引っ張りあげられているのがわかります。なおボイストレーニングで喉を開ける訓練をする際には、のどちんこの上がり具合を見ることもあるそうです。意外なところでも活躍をしているのどちんこですね。

のどちんこのトラブル
手足の大きさが人によって違うように、のどちんこのサイズも人によって様々です。しかし、のどちんこが肥大(長い・太い)している場合次のようなデメリットがあります。
いびき
いびきは睡眠中に気道が狭まることで起こります。体内に取り入れた空気が狭い気道を通過する際に、粘膜が震えて音(いびき)が鳴るのです。そして気道が狭まる原因の1つが、長すぎるのどちんこです。睡眠中は筋肉が弛緩することも相まって、咽頭部に沈みやすく気道を塞ぎがちになるのです。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、睡眠中に呼吸が止まり酸素不足状態に陥る病気です。原因別に3つのタイプに分けられますが、罹患者の9割以上が該当するのが閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。空気の通り道である気道が物理的に狭くなり呼吸が止まります。先ほどのいびきの原因同様に、のどちんこが長いと睡眠中にそれが下垂し気道を塞いでしまいます。
(参考)睡眠時無呼吸症候群の3つのタイプ
1.閉塞性睡眠時無呼吸症候群
空気の通り道の気道が物理的に狭くなり呼吸が止まる。罹患者の9割以上が該当。
2.中枢性睡眠時無呼吸症候群
脳から呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の異常による。閉塞性よりも重症とみなされる。
3.混合型睡眠時無呼吸症候群
閉塞性と中枢性の混合した病態。

なお睡眠時無呼吸症候群はいびきと併発する場合が多いです。またこれらの睡眠障害は、熟睡ができないため「日中の眠気」、「疲労の蓄積」など日常生活にも支障をきたします。原因がのどちんこ以外である場合もありますが、自覚症状がある方は耳鼻咽喉科や呼吸器内科への受診をおすすめします。なお、睡眠時無呼吸症候群については以下にて詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
さて今回のブログでは “のどちんこ”についてお話しました。普段目にする機会が少ないのどちんこですが、「飲食」・「呼吸」・「発声」を支える陰の功労者でしたね。とても大切なからだの一部です。たまにはその役割を思い出し、お口の奥を覗いてあげてはいかがでしょうか。
最後に
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