ブログ・口腔外科
お口の中のできもの放置していませんか?
こんにちは! JR総武線東船橋駅南口ロータリー内にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。
“お口の中のできもの”と聞くと、みなさんはどんな病気を思い出しますか。おそらく口内炎を頭に思い浮かべる方が多いのはないでしょうか。口内炎とは粘膜に起こる炎症の総称で、頬の内側、唇の裏側、舌など口内のあらゆる粘膜にできます。食事の際には辛いものや酸っぱいものが刺激となり痛んだり、会話の際には不快感をおぼえたりと悩みの種ですよね。
この口内炎はストレスや疲れがたまって抵抗力が下がった時に起きやすいと言われています。よってまずは規則正しい生活を心掛けるとともに、歯みがきやうがいでお口の中を清潔に保つようにしてあげましょう。
ただし、口内炎が2週間以上続く場合には「たかが口内炎」とおもってはいけません。なぜなら口腔がんの可能性があるからです。早急に口腔がん検診をおこなうことをお勧めします。なお当院でも口腔がん検査をおこなっております。検査にはThin Prep液状化検体細胞診を用いており、精度の高い口腔がん検診が可能です。もし今長引く口内炎にお悩みの方がいらっしゃいましたらぜひ当院までご相談くださいね。
さて、今日は同じお口の中のできもの “エプーリス”についてお話していきます。
エプーリスって何?
エプーリス(epulis)とはギリシャ語で「歯肉の上にあるもの」という意味です。癌のような悪性腫瘍とは異なり、エプーリスは良性の腫瘤(しゅりゅう)の総称で歯肉種・しこりとも呼ばれることがあります。腫瘍と腫瘤どちらもよく似た言葉ですが、“腫瘍”が生体内の制御に反し細胞が自律的に過剰に増殖するのに対し、エプーリスは限局性のためそれができた場所にとどまっているのが特徴です。
右のお写真をご覧下さい。こちらがエプーリスの実際の症例写真です。赤枠内の箇所がぷっくりと腫れているのがお分かりになるかと思います。この患者様のエプーリスの大きさは2mm程でしたが、大きいものだと直径が20mm程にまでなります。ただ、長期間大きさがほとんど変わらないものが多いようです。色や硬さについても様々で、白くて硬いものもあれば、赤みを帯びて軟らかいものもあります。
またエプーリスは大きく分けて3つの種類に分けられます。1つ目は炎症性エプーリス、2つ目は腫瘍性エプーリス、そして3つ目はその他のエプーリスです。その他のエプーリスには発病した時期により名称がついている妊娠性エプーリスや新生児にみられる非常に珍しい先天性エプーリスなどがあります。
エプーリスの原因
- 適合のよくない補綴物
ブリッジ、入れ歯などの慢性的刺激
- 女性ホルモンの乱れ
エプーリスの症状は男性よりも女性に多くみられ、その数およそ2倍と言われています。
- 口腔内の慢性的な汚れ
歯垢や歯石などによる不衛生な口腔内環境
本ブログでも繰り返しお伝えしていることですが、やはり口腔内の不衛生というのは万病のもとだということがこのエプーリスの症例でもわかりますね。
エプーリスの診断と治療
エプーリスというのは診断名のため、口腔癌との鑑別を確実に行うことが重要です。またどのタイプのエプーリスであるのかを確定するために“病理検査”を行うこともあります。病理検査とは病変部(異変が観察される部位のこと)の組織の一部を採取して、顕微鏡で観察する検査方法です。
先ほどの患者Aさんは、矯正治療で当院に通院中の患者様でした。矯正治療の場合にもご来院の際には必ず口腔内に異常がないか毎回チェックするのですが、その中である日、左上の4番目と5番目の歯の間にぷっくりとした腫瘤が認められたのです。
まずは経過観察をしましたがその後変化がないため、口腔がんのリスクを疑い先述のThin Prep液状化検体細胞診をすることにしました。こちらの検査は針を刺すような血液検査とは異なり、痛みがほとんどないのが特徴です。患者様のお口の中の病変部を歯間ブラシで擦過することで検体を採取します。この時表面麻酔をしますので痛みはほとんど感じません。採取した細胞はお写真の容器に溶かし入れ、臨床検査施設に送り後は結果を待つのみです。基本的に検査結果は1週間程度で判明します。
この検査にはClass1~5(Ⅰ~Ⅴ)までの段階があり数字が大きいほど癌が疑われます。Class3(Ⅲ)以上の場合は大学病院へ紹介しより精密な検査をすすめますが、先ほどの患者様の場合はClass3(Ⅲ)未満のため当院で治療を進めることになりました。
治療方法は外科的に切除をすることがメインになります。
切除の範囲は主に2つに分けられ、エプーリスの基底部から歯肉だけを切除する場合とエプーリスの基底部にある骨を含めて切除する場合があります。ただし、エプーリスによって歯槽骨が侵されていて歯に重度な動揺がある場合や再発を繰り返す場合には発生源が歯根膜とも考えられるのでやむなく抜歯をすることもあります。しかしそれは本当に最終的な手段です。
また原因が外部刺激(不適合な補綴物や歯垢・歯石の付着)の場合はあわせてそちらも治療、除去していく必要があります。ただし妊娠性エプーリスの場合には出産後に縮小・自然消失することも多いのでまずは無事に出産するまで経過観察をしていきます。
なお、口腔がんかどうかの最終診断には、細胞を処理して顕微鏡で調べる病理検査が必要となります。今回の患者Aさんについても当院での切除手術後、切除部位を病理検査にまわし口腔がんではないことが証明されました。
なお一般的に医科で外科手術をする場合、以下の流れが基本です。
1)術前検査
胸部X線、血液検査、尿検査などがありますが内容は患者さんの健康状態、そして受ける手術によっても様々です。
今回のエプーリスの患者さんの場合、液状化検体細胞診がこれにあたります
2)手術実施
3)確定診断
今回は病理組織検査がこれにあたります
医科の手術の場合この手順を踏んでの手術実施が一般的ではありますが、歯科の場合はまだまだ定着していないようです。しかしながら、どんな手術でもリスクはつきものです。そして歯科では抜歯をするような処置の場合、二度と天然歯には戻せません。ゆえにビバ歯科・矯正小児歯科では先ほどの「術前検査→手術→確定診断」の流れにそって外科手術をおこなっております。
お口の中にできものを見つけたときは、過剰に心配する必要はありませんが、長引くようであれば必ず歯科医院を受診しましょう。どんな病気も早期発見早期治療が一番ですよ。
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