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舌にぷっくりとデキモノ?~舌線維腫

こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

みなさん、お口の中のデキモノといったら何を思い浮かべますか?おそらく多くの方が“口内炎”を思い浮かべたことと思います。ある日突然、頬や唇の裏、そして舌などにでき、食事の際にはジンジンとしみるあの口内炎…。筆者も年に何回かはできてしまい悩ましい日々を送ることがあります。

ところで、日々診療をしていますとお口の中のデキモノに悩む多くの患者様と出会います。その中の1つが“舌線維腫”(ぜつせんいしゅ)と呼ばれるものです。腫瘍と聞くと「なんとなく怖い」という漠然としたイメージを持つ方も多いことでしょう。今日はそんな不安を少しでもなくすため、正しい知識をもっていただくために舌線維腫という腫瘍についてのお話をします。ぜひ最後までお付き合いくださいね。

 

舌線維腫とは?

舌線維腫というのは舌にできる良性腫瘍の1つです。といっても「良性」とか「腫瘍」とだけ聞いてもなかなかわかりにくいですよね。もう少し噛み砕いて説明していきます。

まず腫瘍というのは「体にできた細胞のかたまり」です。
私たちの体は心臓、肺、胃など様々な器官が集まってできていますよね。そしてそれぞれの器官は形や働きが同じ細胞が集まってできています。正常な細胞は体や周囲の状態に応じて増えたり増えることをやめたりしてバランスをとっています。しかし何らかの原因でできた異常な細胞がかたまりを作ることがあります。これが腫瘍です。

次に「~性」についてです。結論だけ先に言ってしまいますと悪性腫瘍とはいわゆる癌のことです。この良性か悪性かを見分けるには主に3つのポイントがあります。

1.増殖スピード
悪性の場合は、通常の細胞より増殖するスピードが速い

2.形状
良性の場合は腫瘍の形状が整っていて周りの組織との境界線がハッキリしている。それに対し悪性の場合は不規則に増殖することもあり、形状がギザギザなどいびつで周りの組織との境界線がハッキリしない。

3.浸潤・転移
良性の場合はゆっくりと周囲の組織を押しのけるように増えていく。それに対し、悪性の場合は無秩序に増殖し、周囲の組織に入り込み広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛んでいって増殖(転移)したりする。

 

先ほどのお写真の通り舌線維腫は形状が球体で周囲との境界線も明瞭です。つまり基本的には良性腫瘍となります。悪性腫瘍のように転移することはしませんが放置することで少しずつ大きくなります。また稀に悪性化することもありますのでお口の中にこのような腫瘍(できもの)を発見した場合には一度かかりつけ歯医者さんで診てもらうことをおすすめします。

 

舌線維腫の症状

痛みはほとんどないです。しかし口腔内に突起が存在するため不快感があることも多いようです。なお、腫瘍の中身はお肉がつまっている状態のため(専門用語で充実性といいます)、触ると固いのが特徴です。
余談ですが、同じような場所にできるデキモノに“粘液嚢胞(ねんえきのうほう)”があります。こちらは中身が唾液のため水ぶくれのようで触ると柔らかいのが特徴です。粘液嚢胞については以前のブログ『お口の中に水ぶくれ?~粘液嚢胞』で詳しく説明しておりますので参考になさってください。

 

舌線維腫の原因

主に慢性的な物理的刺激が原因です。義歯の適合が悪いまま装着している場合には、義歯が当たっている部分に線維腫ができることがあります。

 

舌線維腫の治療

基本的にはメスを入れて外科的に切除していきます。再発を防ぐため少し多めに切除していきます。切開をしているため術後は若干の疼痛がありますが、鎮痛剤を服用していただければ問題ない範囲です。また摘出した病変は病理組織検査を行い最終的な病気の診断となります。これがいわゆる“確定診断”と呼ばれるものです。なお、舌線維腫の明らかな原因が物理的な刺激である場合には、それも併せて治療していきます。

 

実際の症例


患者:60代女性
主訴:元々腫瘤(こぶのようなもの)があり、経過を見ていた。痛みは無かったが日常生活の中で噛んでしまうことがあり気になってきた。

治療の流れ

1.細胞診

口腔がんのリスクを疑いThin Prep液状化検体細胞診をしました。採血のように針を刺すことはないため、痛みはありません。腫瘍の部分を歯間ブラシで擦り取り検体を採取します。この時表面麻酔をしますので痛みはほとんど感じません。採取した細胞はお写真の容器に溶かし入れ、臨床検査施設に送り後は結果を待つのみです。基本的に検査結果は2~3週間程度で判明します。

この検査にはClass1~5(Ⅰ~Ⅴ)までの段階があり数字が大きいほど癌が疑われます。Class3(Ⅲ)以上の場合は大学病院へ紹介しより精密な検査をすすめますが、今回の患者様の場合はClass2(Ⅱ)のため当院で治療を進めることになりました。

 

 

2.オペ(外科的切除)

再発を防ぐため少し大きめに切除しました。傷口を縫合し1週間ほどで抜糸です。

 

そして術後から2ヶ月程経過した写真がこちらです。傷口もほとんどわからないくらいに回復しています。

 

3.病理組織検査

切除した病変は念のため病理組織検査を行います。これをもって確定診断となります。今回の患者様は問題なし、との診断で患者様もスタッフも安堵です。

 

さて本日は舌にできるデキモノ、舌線維腫についてお話しました。一言にデキモノといってもその種類は様々です。そのため患者様ご自身ではそれが何か、そして良性なのか悪性なのかの判断はつきません。なぜならその判断をするには最終的に細胞レベルでの検査が必要になるからです。それが今回ご紹介した“細胞診”と“病理組織検査”ですね。もし今お口の中にデキモノがある方がいらっしゃればぜひ一度かかりつけ歯医者さんで診てもらってくださいね。大切なのは「早期発見、早期治療」です。