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歯周病治療のカギ、「SPT」

こんにちは。千葉県船橋市東船橋にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

最大10連休とも言われた今年のゴールデンウイークもあっという間に終わりを迎えましたね。ビバ歯科・矯正小児歯科も3連休のお休みがあり、スタッフ達もリフレッシュすることができました。今月も精力的にブログやSNSにて歯科情報を発信してまいりますのでよろしくお願いします。

さて、普段は歯科医師による治療や症例を多く取り上げていますが、今回の主役は歯科衛生士さんです。歯科衛生士さんというと、定期検診にいったときに歯をピカピカに磨き上げてくれ、歯ブラシ指導をしてくれる優しいヒト、とおもわれる方も多いかもしれませんね。どうしてもむし歯をキュイーンと削るイメージのある歯科医師は怖がられがちです(笑)

今回は歯周病治療の1つ「SPT」についてのお話です。SPTとは歯周病安定期治療のことで、歯周病の病状が落ち着いた歯周組織を維持するために行う治療のことです。ぜひ最後までお付き合いくださいね。

 

歯周病とは?

まず歯周病についておさらいしましょう。歯周病は歯周病原菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。よく「歯の病気」と勘違いされがちですが、歯周病は歯の病気ではありません。歯周病はその名の通り、歯の周りの組織の病気です。これらは歯周組織と呼ばれ、具体的には歯ぐきや歯槽骨など主に歯を支える役割をしている組織です。この歯周組織を歯周病原菌が攻撃し、歯ぐきの下にある歯槽骨を溶かしていきます。歯槽骨が溶けるとますます歯周ポケットの溝が深くなるため、歯周病原菌が更に増殖し住みつきやすくなるという悪循環に陥るのです。そしてその進行とともに歯がグラグラしていき、最悪の場合歯が抜け落ちてしまう怖い病気です。歯周病には以下のように4つのランクがあります。

第1段階

歯と歯ぐきの間から入った細菌(歯垢・歯石)が歯茎に炎症を引き起こす。歯ぐきは赤く腫れ、出血しやすくなる。

 

第2段階

細菌が歯と歯ぐきの境目から割り込み、歯と歯ぐきを離れさせる。(いわゆる歯周ポケット)

第3段階

歯と歯ぐきの境目に付着した細菌が、歯の根っこ(歯根)に沿って根の先へ侵入し、繁殖して臭いを発する。(いわゆる口臭の発生)更に、歯ぐきの中にある歯槽骨を溶かしてしまう。歯周ポケットからは、常時血や膿がにじみ出ている。

第4段階

歯ぐきがやせて下がり、歯槽骨はほとんど吸収されてなくなるので、歯槽骨がむき出しになる。最終的には歯がグラグラと動揺し抜け落ちてしまう。

 

歯周病の治療プロセス

歯周病の治療プロセスは先述した4つのランクによって異なります。第4段階の場合には抜歯をせざるをえませんが、第1~第3段階までは歯周基本治療を行います。軽度の場合にはプラークコントロール(歯垢除去)を主とした治療だけで治ることもあります。しかし一方で歯周ポケットが深く症状の改善がみられない場合にはスケーリング・ルートプレーニング(SRP)により、歯周ポケット内(歯ぐきの中)の歯垢や歯石を除去して歯根面を滑らかにしていきます。これら歯周基本治療は各治療を終えるごとに診査を行い症状の改善を確認し、次の治療方針を決定していきます。

 

 

そしてこれら歯周基本治療を進めていくと、歯周病の病状が安定する時期に入ります。ここからが歯周病の治療の要「SPT」の本領発揮です。

 

歯周病治療の要「SPT」

SPT (supportive periodontal therapy)とはサポーティブペリオドンタルセラピーの略称で、歯周病安定期治療のことを指します。患者様の中にはこれをメインテナンスと混同し「完全に治った」すなわち治癒と思われる方もいらっしゃいますが、残念ながらこの段階では治癒とは言えません。2つの違いを確認しておきます。

 

SPTとは

歯周病の症状が安定した段階で行う「治療」のことです。歯周組織のほとんどが健康ですが、一部病変の進行が休止している状態を指します。歯周病の診断基準として歯周ポケット4mm以上というのがありますが、この段階では歯周ポケット4mm以上、歯の動揺などが認められる状態です。つまり依然として歯周病であることを意味します。

 

メインテナンスとは

歯周病が治癒した段階で行う「健康管理」のことです。歯周組織が臨床的に健康を回復した状態であることを指します。臨床診断の基準として、歯肉の炎症がなく、歯周ポケットは3mm以下、プロービング(*)時に出血がみられないなどを確認します。

*プロービング…プローブという器具を歯周ポケット内に入れてその深さを測ります

いかがですか。比べてみるとメインテナンスとSPTの違いが一目瞭然ですね。あくまで歯周病の安定期という位置づけですから、SPTは歯周病治療には欠かせないものです。

 

SPTの重要性

SPTの内容、期間、ゴールは以下の通りです。

内容

歯周基本治療で行うプラークコントロール、スケーリング(SC)、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)、歯周ポケット内洗浄、咬合調整などを各患者様の症状によって選択していきます。

期間

通常の定期検診同様に基本は3ヶ月ごとにご来院いただきます。ただし患者様のお口の中の状態や歯周病の進行度によってSPTの間隔は増減します。例えば、はじめは1ヶ月ごと、その後は3ヶ月ごと更に6ヶ月となることもあります。

SPTのゴール

SPTを繰り返した結果、歯周組織の健康が回復したと診断できた場合にSPTは終了となります。臨床診断の基準は歯周組織の炎症が認められないこと、歯周ポケットが3mm以下でプロービング時に出血がないことなどです。SPT終了後は健康管理として通常のメインテンスで経過をみていきます。

 

なお、上記は歯科医院でのプロフェッショナルケアですが、それとあわせて患者様ご本人で行うセルフケアもとても重要です。歯科医院での専門的な治療で安定した歯周環境を保つためには、患者様自身で行う毎日のブラッシングがとても大切なのです。

よく磨き残しとして「歯垢(プラーク)」という単語を聞きますよね?歯垢とは食後8時間程度でできる微生物の塊のことです。乳白色をしていて指で触るとヌメヌメしているアレです。そしてこの歯垢が口腔内に長時間とどまり続け膜のようになると「バイオフィルム」と呼ばれます。このバイオフィルムの状態にまで成長すると、水はもちろん通常のブラッシングでは流されず、ますます細菌を巻き込んで更に強固な塊となっていくのです。ちなみにお風呂場の排水溝やキッチンの三角コーナーを触ったときに、ヌメヌメとした感触があり「うわぁ…」とおもった経験はありませんか?あれもバイオフィルムの一種です。あれらのヌメリも強力な除菌漂白剤やブラシを使ってゴシゴシしないと取れませんよね?あれと同じことがあなたのお口の中でおこっているのです。怖いですね…。

話が少しそれましたが、この厄介なバイオフィルムを作らないためにも、毎食後のブラッシング、それも正しいブラッシングが必要になるのです。つまりSPTの治療は患者様ご自身と私たち歯科スタッフが二人三脚で進めてはじめて最大限の効果を発するということです。

 

ここで繰り返しになりますが、SPTの段階では歯周病は治癒しておりません。まだ「治療」の段階です。まれに患者様の中でSPTの途中でご来院をやめてしまう方がいらっしゃいますが、それではせっかく安定期になった症状が逆戻りしてしまう可能性があります。歯周病の治療期間は時間や通院回数がかかることも多く、ケースバイケースではありますが6ヶ月~1年程度かかります。また重度の歯周病の場合には生活習慣(喫煙・飲酒など)の見直しも必要で、一朝一夕で治るものではありません。そのため途中で通院をあきらめてしまう患者様もいらっしゃいます。そうですよね。日々お仕事やプライベートがある中で、「歯医者さんに行く」というのはどうしても後回しになってしまうお気持ちもわかります。しかし、歯周病を放置すると全身疾患にまで広がる恐れもあります。当院のブログ内でも歯周病と食道がんの関係歯周病と認知症の関係をご紹介しておりますのでぜひご一読ください。