ブログ・歯周病
飲み薬と抗カビ剤の歯磨きで歯周病を撃退!?
こんにちは。千葉県船橋市東船橋にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。
先日のブログ:歯周病治療のカギ“SPT”で、歯周病の改善にはセルフケアとプロケアのどちらも大切だというお話をしました。歯周病基本治療では器具を使っての細菌除去を行いますが、それでも治らない場合には歯周外科手術を行います。歯ぐきを歯根や歯槽骨から剥がし付着している汚れや歯石を徹底的に除去するのです。しかしながら、外科処置を伴う治療の場合、患者様の精神的肉体的ご負担が少なくなく、更に歯ぐきの切開を伴うため患部の回復に時間がかかります。
そこで誕生したのが今回ご紹介する歯周内科治療です。これまでの外部からのアプローチではなく、体の中から歯周病を治療しようという画期的な治療方法です。ぜひ最後までお読みくださいね。
目次
歯周内科治療とは
繰り返しになりますが、歯周内科治療とはお薬を使って歯周病を治そうという治療法です。歯周病は細菌による感染症ですから、風邪やインフルエンザの類のように「薬」で治すことができないか、このような新しい発想から誕生しました。
通常歯周病は細菌感染と考えられていますが、歯周内科治療では、歯周病原性菌と真菌(カビ)との混合感染と捉え抗生物質と抗真菌剤とで治療していきます。もっと簡単に言えば病気の原因となるバイ菌を特定して、そのバイ菌に効く薬を服用するのです。ビバ歯科・矯正小児歯科では歯周病の診査の際に重度と診断した患者様には、まずこの歯周内科治療にご案内しています。
歯周内科治療の流れ
当院では歯周内科治療を以下の3つの流れで行います。
1回目
[口腔内クリーニング]
歯垢・歯石・着色を除去し口腔内環境を整えます。
[ハリゾンシロップ及びうがい薬の処方]
ハリゾンシロップとは抗真菌抗生剤(アンホテリシンB)です。これを決められた期間使用することで歯周病の原因菌の一つであるカンジダ・アルビカンスを一気にやっつけていきます。使い方は薬瓶からシロップを適量(*)歯ブラシにつけ、ブラッシングをしていきます。このとき歯と歯ぐきの境目に塗り込むように丁寧に磨くのがポイントです。上下の歯を磨き終えたらシロップを全て吐き出します。その後、うがい薬で30秒間ぶくぶくうがい、最後に水道水で10秒間のうがいをします。
*…使用量に関しては患者様ごとにご案内しています。
[歯科内科治療の書籍提供]
実際の歯科医師さんのご経験を絡ませて、歯周病という感染症の仕組みが書かれています。専門用語はかみ砕いて説明されているため分かりやすく、歯周病を知るための始めの1冊にピッタリです。
話しは変わりますが、「孫子」という兵法書の一節に『彼を知り己を知れば百戦殆からず』という言葉があります。これは、敵と味方の情勢をよく知って戦えば、何度戦っても敗れることはない、という意味です。歯周病という敵に立ち向かうため、まずは歯周病という病気の正体そして自分自身のお口の中を知ることも大切です。ビバ歯科・矯正小児歯科では歯周内科治療のスタート時にご案内しています。
2回目
[口腔内クリーニング]
歯垢・歯石・着色を除去し口腔内環境を整えます。
[ジスロマック処方]
1日1回(2錠)を食間に服用しこれを3日間続けます。ちなみにこのジスロマックとは抗生物質で歯周病の原因菌への殺菌作用があります。先述のハリゾンシロップでのブラッシングをしっかりやっておくことで、このジスロマックの殺菌効果が高くなります。なお、ジスロマックは副作用が非常に少ない抗生物質ではありますが以下のような症状がでることもございます。
- 下痢
- 便秘
- 吐き気
- 蕁麻疹
- 腹痛 等
そのため、なにか異常が出た場合にすぐに対応ができるよう、患者様には当院診療時間内(日中)での服用をお願いしております。
3回目
[口腔内クリーニング]
歯垢・歯石・着色を除去し口腔内環境を整えます。
[位相差顕微鏡検査]
位相差顕微鏡とは、口腔内に住み着く歯周病菌やカビ菌などの細菌の種類や量を確認するための機械です。お口の中には常に500~700種類の細菌が生息していると言われています。また一言に歯周病といっても、その原因菌だけでも10種類以上あり、それぞれの菌によって症状や特徴が異なるのです。そこで位相差顕微鏡によりお口の中に住む菌の種類を特定し、患者様それぞれに合わせた除菌方法・治療方法を決めていきます。
※以下実際の患者様の術前(左)術後(右)です。
術前にはカンジタが広がった中にトレポネーマという糸ミミズのような細菌が観察されます。しかし術後ではカンジタやトレポネーマの姿が消え、善玉菌の球菌や桿菌が中心のコロニーになりました。
[口腔内写真]
治療前、治療経過、治療後を比較していくためにお口の中の写真を撮影します。普段ブラッシングの際にも手鏡等でお口の中をご覧になることもあると思いますが、なかなか奥歯や歯肉の様子までを観察することはしないと思います。患者様ご自身に現在の口腔内の状況、そして治療の成果を実感していただくために、口腔内写真の撮影は欠かせません。それはきっと言葉によるご説明だけではなく視覚で見た方が患者様にもご納得したうえで治療に臨んでいただけるからです。まさしく「百聞は一見に如かず」ですね。
以上がビバ歯科・矯正小児歯科の歯周内科治療の流れです。なおこれらは保険外治療です。そして歯周内科治療を一通り終えたあとは通常の口腔内クリーニング(スケーリング等)に戻って治療を進めていきます。
歯周内科治療Q&A
最後に患者様からよくご質問いただくことについてまとめました。
Q.薬の副作用はありますか?
A.基本的に副作用がほとんどないお薬です。しかし、以前に抗生物質や風邪薬で下痢になったという方にはあらかじめ下痢止めを処方しております。ご心配な方、また他に服用中のお薬がある方はスタッフまでお声掛け下さい。なお、稀ではありますが、飲み合わせによってはアナフィラキシーショックを起こし命に関わることもありますので、おくすり手帳をお持ちいただくと安心です。
Q.煙草はやめなければなりませんか?
A.煙草は歯周病を進行させてしまいますので、お口の健康を第一に考えるのであれば禁煙されることをおすすめします。またお薬の効果を期待するためにも特に服用中は控えて頂くようお願いしています。特に喫煙者の歯周病リスクは非喫煙者の4倍以上とも言われております。こちらのブログでも詳しくご説明しておりますのでぜひご一読下さい。
Q.歯周病はヒトにうつりますか?
A.はい、うつります。歯周病は感染症ですから、ヒト・ヒト間での感染をします。元々歯周病菌はお口の中に存在しない菌ですが、“唾液”を介してヒトからヒトへ感染するのです。それは、箸の使いまわし、コップの回し飲み、くしゃみ、キスなどといった日常生活での感染が主です。一緒に生活するご家族、パートナーに感染させてしまったり、もしくは感染させられたりすることも多いに考えられますので、心当たりがある方はご家族で歯周病チェックをすることをお勧めします。
Q.妊娠中でも歯周内科治療はできますか?
A.妊娠中は母体及び胎児の安全を第一に考え、内服薬の処方は行っておりません。つまり妊娠中及び授乳期間中は歯周内科治療を行っておりません。そのため、妊活などをお考えの方はパートナーの方と一緒に事前に歯周病の検査、治療をすることをお勧めします。
Q.お薬だけを購入することはできますか?
A.できません。歯周内科治療は国家資格を有する歯科医師・歯科衛生士が患者様のお口の中を診察し、様々な検査をしたうえで処方する薬の種類を選択していきます。
いかがでしたか?重症化すると治癒がしづらく根気のいる歯周病治療です。しかし歯周内科治療の導入により患者様が前向きに治療に臨めるようになったと感じています。それはやはり外科的な手術による痛みを伴わないことが大きいです。さらに歯周内科治療は一般的な歯周病治療よりもずっと治療効果が高いということも患者様を後押ししている要因の1つです。なぜなら歯周内科治療では細菌の質が大きく変わっていくからです(悪玉菌・カビのみを排除)。特に位相差顕微鏡によってお口の中の細菌の変化を患者様も目視確認し、それを実感できることは大きいと思います。
現在歯周病で悩んでいたり、久しく歯医者さんでの検診に行ってなかったりでご不安な方、ぜひ一度ビバ歯科・矯正小児歯科までご相談下さいね。