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むし歯治療の強い味方~変幻自在のオムニクロマ

こんにちは。千葉県船橋市東船橋にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

以前のブログ:保険適用の治療が増えました!でもお知らせしましたが、今年の4月よりCAD/CAMインレー*が保険適用になりましたね。こちらの素材はハイブリットレジンで見た目が白色のため審美性に優れています。ところで“詰め物”と一言にいっても、その素材は様々です。そのため、患者様それぞれのご希望によっても使い分ける必要があります。

例えば、審美性を求める方はセラミックやジルコニアなどの素材を、歯への適合の良さや2次むし歯へのなりにくさを求める方は金合金を、そして保険適用で安価な素材を求める方はパラジウム合金(いわゆる銀歯)をといった感じです。当院では患者様のご希望を伺った上でその患者様のお口の中の状態にベストな素材をご提案しております。

さて、そんな奥が深い“詰め物”の素材ですが、今日は院長セキモトおすすめのアイテムをご紹介いたします。その名は『オムニクロマ』です。ぜひ最後までご覧くださいね。

*条件有。詳細はこちらからご覧ください。

 

不思議なアイテムオムニクロマ

歯科材料の1つ“オムニクロマ”とは、我がビバ歯科でも欠かせないアイテムです。こちらはコンポジットレジンの一種でここ最近にリリースされた製品です。使い方はコンポジットレジン治療(ペースト状の合成樹脂を治療部位につめること)と同様で、歯が欠けてしまった部位やむし歯治療で削って穴が空いてしまった部位を埋めるために使います。通常、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)は患者様の歯型をとり歯科技工士さんが製作しますが、オムニクロマは従来のコンポジットレジン同様に歯医者さんがその場で欠けた部位を成形できるというのが特徴です。とは言え、患者様は治療中にどのようなことが行われているか目にする機会はほとんどありませんよね。まずはざっくりと簡単にむし歯治療の手順をご説明します。

標準的なむし歯治療の流れ

なおこちらは小さなむし歯の場合の治療手順です。初期むし歯であれば削る必要はありませんし、逆に歯の神経にまで到達する大きなむし歯の場合にはこの限りではありません。
さて話をオムニクロマに戻します。以前は上記手順の②合成樹脂レジンを充填の際には、歯の色味と色調をあわせるため、シェードという色見本を使って色を決めていました。下のお写真がシェードです。美容室などで髪のカラーリングをする際にみるヘアカラーチャートと似ているからもしれませんね(笑)こちらを患者様の残存歯(残っている歯)と照らし合わせて最も色味が近いものを選択していきます。

ところが、オムニクロマには色調が1つしかないのです。不思議ですね。実はこのオムニクロマは周辺の色調に合わせて発色してくれます。つまり、患者様自身の歯に寄せて発色してくれるのです。以下はオムニクロマを発明した株式会社トクヤマデンタルさんが公開している資料です。光照射前後の色味に注目してください。上段は光照射前で歯の中央に白色不透明なペーストが確認できます。歯質部分との境目が明確です。それに対し下段は光照射後です。驚くことに白色不透明なペーストは窩洞部位(歯を削った部分)の色調に同化し自然な色味に変化しました。上下で見比べると一目瞭然ですよね。こちらには全16パターンの色味が紹介されておりますが、これらがすべてオムニクロマ1つで表現できるのです。長年シェードを利用し、「できる限り残存歯に近い色を…」と試行錯誤していた私たちにとっては驚くべきかつ嬉しい歯科材料の開発でした。そして、それは患者様にも喜んでいただけるアイテムです。

 

オムニクロマを使用した症例

ビバ歯科・矯正小児歯科では早々にオムニクロマを採用し、積極的に治療に活用しています。以下は実際に当院にてオムニクロマで治療をした患者様の症例写真です。

症例1

左上2番歯(過去の詰め物が劣化により変色)

 

症例2

右上1番歯&左上1番歯(過去の詰め物が劣化により変色)

症例3

左上1番歯及び2番歯(過去の詰め物が劣化により変色)

臼歯部(いわゆる奥歯)にもオムニクロマを使用することはできますが、耐久性と審美性のバランスから当院では前歯部への使用が多いです。

 

オムニクロマの発色の仕組み

ところでオムニ~というと「オムニバス形式の〇〇」なんて言葉が浮かびますよね。オムニとは“すべての、あらゆる”、クロマとは“色”のことを指すため、オムニクロマとは“すべての色”という意味の言葉です。まさしく今回の歯科材料にピッタリのネーミングです。しかし、「元は1つなのに、光照射後にはあらゆる色味に変化する」といったこのオムニクロマ、一体どういう仕組みか気になりますよね?簡単にではありますがその発色の秘密についても少しだけご紹介します。
まず従来のコンポジットレジンの治療(合成樹脂を治療部位につめること)では、その歯科材料のほとんどに複数のシェードがありました。歯の色調をなんとか模倣するために赤色や黄色の顔料を添加し色を調整しています。しかし、今回ご紹介しているオムニクロマでは顔料が含まれていません。構造色によって歯質の色を再現するという新しい発想の歯科材料です。以下で詳しくお話していきます。できる限り専門用語をつかわずに書いておりますのでぜひご覧くださいね。

 

構造色って?

構造色というのは“光の反射によって見える色”のことです。その個体もしくは物体がもつ微細構造によって光が増幅もしくは減衰することで特別な色素をもっていなくても発色してみえます。つまり本来それが持つ色とは異なる色を発色することができるのです。まさしくオムニ(あらゆる)クロマ(色)ですよね。身近な構造色の例をあげていきます。

 

シャボン玉

一見透明なシャボン玉ですが、ふわふわと飛んでいるのをみると虹色のような色にみえますよね。しかし、シャボン玉そのものには色はついていません。その微細構造によって光が干渉し色付いてみえるのです。見る角度によって様々な色彩がみられるのも構造色の特徴です。

 

モルフォ蝶

世界で最も美しい蝶として知られるモルフォ蝶、特徴的な鮮やかな青色の羽にみえることで知られています。しかし実は羽そのものは無色です。モルフォ蝶の鱗粉の微細構造が青色の波長だけを強く反射することであのような独自の青色に見えるのです。少し話はそれますが、実はこのモルフォ蝶の構造色の原理を応用した自動車があります。トヨタの高級自動車ブランド:レクサス(Structural Blue(ストラクチュラルブルー))です。モルフォ蝶の着想を得て開発には15年もかけたそうです。光の反射により圧倒的な鮮やかさと強い輝き、深みのある陰影を実現したこのボディは惚れ惚れしますね。

 

シロクマ

陸上の最大肉食獣と言われ、アザラシの赤ちゃんや魚、水鳥を食べるシロクマ。その名前の通り、見た目は真っ白ですよね。ところが、実はこのシロクマ、本当は『クロクマ』だということを知っていますか?
シロクマ(正式和名はホッキョクグマ)の毛は本来透明で光の乱反射によって白く見えているだけなのです。さらに、毛をかきわけて見える地肌ですがこちらは真っ黒・・・肉球や爪も黒いんです。また極寒の北極圏で生存するためにこの色はとても重要な要素です。透明な毛のおかげで太陽光が地肌まで直接届き、そして太陽光が届いた地肌は黒いので太陽の熱をよく吸収して体温をあげることができるのです。それにしても「シロクマ」と呼ばれているのに実は「クロクマ」だとは…はじめて知った時は本当に驚きました(笑)

 

ヤマトタマムシ

緑色の金属光沢があるヤマトタマムシですが、羽に緑色の色素をもっているわけではありません。光が反射すると緑色にみえるという羽の構造によってこのように輝いてみえるのです。ちなみに、驚くべきことにヤマトタマムシが死んだあともこの色は残ります。通常動物の死後は色が褪せて変化しますが、この構造色は個体が死んでもそのまま残るのです。そのためヤマトタマムシの羽は工芸品や装飾品に使われることがあります。法隆寺の玉虫厨子などが有名です。『虎は死して皮を留め人は死して名を残す』などと言われますが、『ヤマトタマムシは死して色を残す』ですね。

 

いかがでしたか。オムニクロマの開発のすごさやその可能性が少しでも皆様に伝われば嬉しいです。
特に前歯部のような口元から見える箇所の歯では、「治療後、他の歯と色味が違くて気になる…」といった患者様のお悩みが解消されるきっかけとなりました。また、以前はシェードを使い患者様と一緒にお色味の決定に時間を要しましたが、その時間も必要なくなり治療時間の短縮もできるようになりました。こちらも患者様に喜ばれることのひとつです。もし今「治療をした歯が変色して気になる」や「銀歯の部分を白くしたい」などお悩みがある方がいらっしゃいましたらぜひ一度ビバ歯科・矯正小児歯科までご相談くださいね。まずはお電話(047-421-0118)にてお待ちしております。