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その歯、捨てないで!~再生医療の可能性

こんにちは。千葉県船橋市東船橋にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

以前のブログ:あなたの歯がタイムカプセルになる時代がきています!で、歯が冷凍保存できるという話をしました。対象となる歯は、永久歯であれば小臼歯や親知らずと条件はあるものの、自身の歯を移植できるというのはとても魅力的な方法でしたよね。実際に当院にも歯の冷凍保存をするために他県から患者様がいらっしゃることもあります。このような歯のリサイクルですが、実は他にもあるんです。今日は再生医療のお話です。

 

そもそも再生医療って何?

『再生医療』とは、病気や怪我などで失われた体の組織や臓器の機能を回復させようとする医療のことです。それも薬で治療をするのではなく、元々ヒトのからだに備わった“再生する力”を利用して元通りに戻すことを目指しています。例えばトカゲなどは尻尾や手足を切られてもまた生えてきます。実は、トカゲほどではないですが、ヒトにも“再生する力”があるのです。その力を利用した治療を再生医療といいます。

変身上手の幹細胞

以前、『ヒト幹細胞』や『幹細胞コスメ』という言葉が話題になりましたよね。スキンケアやエステなど美容に興味がある方は耳にしたこともあるのではないでしょうか。ただ、『幹細胞って何?』って改めて考えた時、十分に説明できますか?再生医療の核を担っているともいえる幹細胞について一度おさらいしておきましょう。

幹細胞とは簡単に言うと、“さまざまな細胞の元になる細胞”のことです。私たちヒトは60兆個もの小さな細胞が集まってできていますが、まさしくこれらの細胞たちを作り出すもとになっているのが幹細胞なのです。

もう少し詳しくみていきましょう。幹細胞は以下2つの能力を持つ細胞と定義されています。

1.多分化能~自分とは違う細胞になる

細胞の中には定期的に生まれ変わりを繰り返している細胞がいます。例えば胃や腸の内側を覆っている粘膜細胞はおよそ24時間、肌の細胞は1〜2か月で新しい細胞に置き換えられます。その生まれ変わりとなるのが幹細胞です。

2.自己複製能~自分自身と同じ細胞を作り出す

細胞分裂を複数繰り返しても分化することはなく、母細胞と娘細胞が全く同じ細胞になります。つまり幹細胞が幹細胞に分身します。

 

再生医療は幹細胞のこれら“再生能力”を利用していきます。

 

抜いた歯に秘められたパワー

ここで歯の話に戻ります。冒頭で歯の冷凍保存の話に触れましたが、それは抜歯した歯をそのまま移植するという方法でした。そして移植の中でも自家歯牙移植すなわち自分の歯を自分自身にのみ移植するという方法です。しかし、それでは限りがありますよね。歯はそのまま歯としてのみ機能を復活するからです。

そこで本日ご紹介するのが『歯髄細胞バンク』です。歯髄とは歯の神経のことでその細胞が歯髄細胞です。歯髄細胞の中には良質な幹細胞が含まれており再生医療に役立つとされています。そして先の歯の冷凍保存との違いは、この歯髄細胞内の幹細胞が歯“以外”の組織に生まれ変われる可能性を秘めているということです。

 

 

対象となる歯

抜歯した乳歯や親知らずです。本来であれば医療用廃棄物として破棄の対象でしたが、健康な乳歯や親知らずであれば幹細胞を採取できます。なお幹細胞の数は加齢と共に急激に減少していくため、再生医療で使用する場合にはできるだけ若く健康な時の幹細胞を採取することが大切です。

※抜歯(もしくは脱落)後48時間を目安に培養を開始していくため、抜歯(もしくは脱落)からお時間を経過した歯は対象外です。

 

歯髄細胞バンクの流れ

1.お申込み

当院は株式会社セルテクノロジーと提携している認定歯科施設です。

まずは提携先のお申込みフォームからお手続きをお願いします。その際、抜歯施設の項目を当院(ビバ歯科・矯正小児歯科)とご入力下さい。

2.抜歯&配送

当院にて抜歯後、細胞保管施設に配送します。

※当院では抜歯のみを行い、歯髄の採取は行いません。

3.歯髄採取

無菌室内で歯髄を採取し、細胞処理を行った後細胞培養を開始します。

4.クリーンルームで細胞培養

10日前後で細胞生着(細胞が増殖する準備)の有無を確認します。この段階で細胞が元気で保存が可能かどうかおおむね判断します。

5.検査&保管

1ヶ月程時間をかけて、一定量まで培養します。その後、細胞の保管前検査結果等に問題なければお預かりした歯髄細胞をマイナス150℃以下の超低温で保存します。

※細胞にも個人差があるため、細胞数及び培養期間は目安です。

 

*なお歯髄バングの詳細は株式会社セルテクノロジーのホームページをご覧ください。

よくある質問

Q.以前抜いた歯を保管しています。抜いてから時間が経過していても歯髄バンクに申込できますか?

A.できません。抜歯(もしくは脱落)後48時間を目安に培養を開始する必要がありますので、抜けてからお時間の経過した歯のお取り扱いはできません。

 

Q.むし歯のある歯や生え変わりにむけて歯髄の吸収が進んだ乳歯でも申込できますか?

A.お申込みはできます。良質な細胞が残っていれば培養が成功する場合があります。

 

Q.抜歯後に歯は洗浄した方がいいですか?

A.いいえ、洗浄しないで下さい。歯髄細胞が流れ落ちるリスクを避ける為に、洗浄等はおこなわず直ちに専用の保存容器に入れてください。

 

Q.年齢が高くても歯髄細胞バンクに申込みはできますか?

A.はい、お申込みいただけます。良質な細胞が残っていれば培養が成功する可能性があります。

幹細胞を採取する様々な方法

ご存知の方も多いと思いますが、幹細胞は骨髄や臍帯血からも採取することができます。しかし、体へのご負担やリスク、そして採取機会の頻度などを考えると、抜去歯(抜いた歯)の歯髄から採取するのが最適といえます。

 

当院ではグラグラし始めた乳歯の抜歯、そして親知らずの抜歯を日々おこなっています。そしてそれら抜去歯については破棄する方もいれば、記念にとお持ち帰りになられる方もいらっしゃいます。今後は更なる選択肢とし歯髄バンクを検討してみてはいかがでしょうか。特に若く健康なうちの幹細胞ほど最適です。ご自身の歯髄幹細胞を保管しておくことで、将来なにかあった際の治療の選択肢が広がる可能性があります。将来の自分への投資にぜひ歯髄バンクをご利用下さい。