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美容だけじゃないボツリヌス注射!力のコントロールで肩こりしらず?

こんにちは。千葉県船橋市東船橋にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

夜中に隣からこんな音が聞こえてきたことはありませんか。

 

「ギシギシギシ・・・」

「カチカチカチ・・・」

これ何の音かわかりますか?
そうです、歯ぎしりですね。自分の歯ぎしりを聞くことはなかなかないと思いますが、ご家族や同居中の方の歯ぎしりを聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。歯ぎしりの音って何とも言えない、耳を塞ぎたくなる音がしますよね。
そして私たち歯医者さんとしては、この歯ぎしり・食いしばりをする人をみると絶対に放っておけません。なぜなら、寝ている間の歯ぎしり・食いしばりによる噛む力はその人の体重の5倍~15倍もの負荷がかかっていると言われているからです。例えば成人男性60㎏の人なら、300~900kg、なんと1t近くにもなるわけです。歯が人体の組織の中で最も硬いとはいえ、さすがにダメージがないわけがありません。歯ぎしりや食いしばりは歯やその周辺組織にジワリジワリとダメージを与えていくのです。
そこで今日は歯ぎしりや食いしばりが歯に与える影響と、その治療法の1つボツリヌス注射についてのお話です。自覚がある人もない人も基本的に睡眠中の歯ぎしりや食いしばりはみんなが無意識にしているものです。ぜひ本ブログを最後までご覧いただき、“力のコントロール”について学んでいただければ嬉しいです。

 

歯ぎしり・食いしばりによる歯へのダメージ

まず本題に入るまえに、歯ぎしり・食いしばりがどんなダメージを引き起こすかおさらいします。一言に歯ぎしり・食いしばりといっても様々な種類*がありますが、共通していえるのはいずれにしても「過度な咬合力(噛む力)」が歯や周辺組織に働いているということです。例えば生卵をグッと握りしめたとしたらどうなるでしょうか?多少であれば特に変化はありませんが、ギューと力を与えつづけるとあるとき“グシャ”と潰れますよね?少し極端な例ではありますが、過度な咬合力とはこれと同じです。つまり必要以上の力が歯にかかり続けるといつか歯も割れてしまうこがあるのです。怖いですね…。
とは言え、残念なことに『たかが歯ぎしり・食いしばり』と考えている方は少なくありません。以下に歯ぎしり・食いしばりが原因で引き起こされるお口周辺のトラブルについてご紹介しますのでまずはご覧ください。

*歯ぎしり・食いしばりの種類について詳しくは以前のブログ『歯ぎしり・食いしばりに気づいていますか?』で説明しています。ぜひ参考にして下さいね。

 

歯根破折

過度な力に耐えられなくなった歯根(歯の根っこ)が縦に裂けるように割れてしまうことです。いわば歯の疲労骨折です。歯根破折の場合、治療が困難を極めほとんどの場合が抜歯になります。

実際の写真(歯が縦にスパっと割れています)

歯牙損耗(しがそんもう)

歯牙損耗*とはむし歯ではないのに、歯が溶けたり欠けたりする病気です。以下の患者様は過度な歯ぎしり・食いしばりにより、様々な歯牙損耗の症状が確認できます。まず黄色い枠で囲んだ2つの歯には咬耗と呼ばれる歯のすり減りがあります。これは上下の歯の咬合面(噛むところ)が必要以上に接触し合い、お互いにすり減る症状です。次に、青枠内の部位にはチップ(歯質にヒビが入り欠けている)も確認できます。このようなチップがあるとヒビの箇所に歯垢(プラーク)が溜まりやすくむし歯の原因にもなります。

*歯牙損耗ついて詳しくは以前のブログ『歯医者が震える四字熟語「歯牙損耗」』で説明しています。ぜひ参考にして下さいね。

補綴物破損

補綴物(ほてつぶつ)とはむし歯などで歯を削り取った部分を修復する被せ物のことを言います。以下の写真をご覧ください。こちらはインプラントのお写真ですが、装着して数ヶ月後患者様の歯ぎしり・食いしばりの影響で上部構造が2つに割れてしまいました。人工物でさえもこのように破損してしまうわけですから、これが自身の歯(天然歯)で起こったら、、、と考えると本当に怖いですね。

くさび状欠損

過度な力が原因で歯の根元がくさび状に欠ける症状です。歯頚部と呼ばれる歯の生え際の表面がすり減り痛みも伴うことから、一見するとむし歯と勘違いされがちですが原因はむし歯ではなく、過剰な咬合力が原因です。ほとんどの場合知覚過敏を伴います。

以前のブログ『歯の根元がなくなる!?こんな症状があったら“くさび状欠損”かもしれません』で詳しく説明しておりますのでぜひご覧ください。

 

骨隆起(こつりゅうき)

歯ぐきの周りや上顎の骨が盛り上がり、コブのように出っ張ったものです。歯ぐきの炎症や腫瘍ではないため特に痛みはありません。そのため日常生活に支障がない限りは早急に除去する必要はありません。しかし、「出っ張りが邪魔して喋りにくい」、「入れ歯があたって痛い」、「骨隆起が邪魔で矯正装置が装着できない」、「イビキ・無呼吸のリスクがあがる」*などの場合には外科的処理をしていくこともあります。
*骨隆起が起こると骨が盛り上がるため、その分お口の中の容積が狭まります。すると舌が咽頭の方に引き込まれる低位舌の状態になり、イビキや無呼吸のリスクがあがるのです。低位舌については以前のブログ『ベロ(舌)は宝物!』で詳しく説明しています。

 

頬粘膜圧痕(きょうねんまくあっこん)

歯ぎしりや食いしばりがあると、常に頬が歯に押し付けられてしまい頬の内側に痕がついてしまいます。下のお写真は実際の患者様のお写真です。どちらも同じ患者様の口腔内で左右共に白い線が確認できます。これが頬粘膜圧痕です。また舌の側面や先端にも歯が押し付けられつづけると凸凹した痕がつきます。これを舌圧痕と言います。

 

顎関節症(がくかんせつしょう)

口を開ける時に痛みが伴ったり、口を開ける時にカクカクと音が鳴ったりする病気です。深刻化すると咀嚼自体が苦痛で食事をとることもままならなくなります。以前のブログ『マスク着用で顎関節症に!?』でも詳しく書いておりますのでぜひご覧ください。

 

その他

お口周りではありませんが、歯ぎしり・食いしばりが原因で肩こりや頭痛が起きることがあります。歯ぎしりに使う筋肉が顎から首・肩、もしくは顎から頭の横に広がっている側頭筋につながっており筋肉の緊張が伝わり肩こりや頭痛につながるのです。

 

さてここまでで歯ぎしり・食いしばりの怖さが分かったと思います。続いてこれらの治療方法の1つであるボツリヌス注射についてご紹介していきます。

 

ボツリヌス注射って何?

ボツリヌス注射というと聞きなれない方も多いかもしれませんね。ではボトックス注射はどうですか?おそらくこちらの名称の方が世間で広く知られていることと思います。そして「ボトックス=美容」を思い浮かべた方が多いのではないでしょうか。ボトックスはお顔のエラとりやシワの改善などのイメージが強いですよね。実はボトックスというのは製品名で、ボトックス注射もボツリヌス注射もいずれも成分は同じです。本ブログでは便宜上ボツリヌス注射で統一していきます。

さてボツリヌス治療とはボツリヌス菌がつくるタンパク質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬剤を筋肉内に注射する治療です。(“ボツリヌス”~と何回も出てきて混乱しそうですが、「ボツリヌス菌由来の成分を注射するのね」と思ってもらえればOKです)ボツリヌストキシンは筋肉に対し弛緩作用があるため、緊張している筋肉をリラックスさせ、凝りを緩和することができます。例えば、表情筋の緊張が原因で生じる眉間やオデコなどのシワは、周辺の筋肉をリラックスさせることでシワができないようになるのです。ボツリヌストキシンの効果を実にうまく利用した治療法ですね。そして、この“筋肉をゆるめてリラックスさせる”というのは美容業界のみではなく医科においては広く治療に用いられています。

 

医科におけるボツリヌス治療の一例

・眼瞼痙攣(がんけんけいれん)

本人の意志に関係なく目の周りの筋肉が勝手に痙攣し、ひどい場合には目が開けにくくなる病気

 

・斜視

物を見ようとする時に、片目は正面を向いていても、もう片目が違う方向を向いてしまっている状態、左右の視線が合わない状態になる病気。片目が内側に向いてしまう内斜視、外側に向いてしまう外斜視などがある。

・片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん)

本人の意志に関係なく顔の片側の筋肉がピクピクと動く病気

 

・上肢痙縮(じょうしけいしゅく)、下肢痙縮(かしけいしゅく)

脳卒中や頭部外傷、脊椎損傷等の後遺症により手足が麻痺し筋肉が固くなる病気。 筋肉の緊張により手の指が曲がったままになったり、脚が突っ張って動かしにくくなったりします。

ちなみに、ボツリヌス菌は土壌や海、湖、川などの泥砂中に分布している菌で食中毒の原因なります。“毒”と聞くとちょっと怖い気もしますが安心してください。ボツリヌス治療ではボツリヌス菌そのものを注射するわけではないので、ボツリヌス菌に感染する危険性はありません。さて前置きが長くなりましたが、ここから歯科におけるボツリヌス治療についてご案内していきますね。

 

歯医者さんでのボツリヌス注射

本ブログの冒頭で歯ぎしり・食いしばりによる口腔内のトラブルについてお話をしましたが、これらは過度な咬合力(噛む力)が原因でした。そこで『ボツリヌス注射』の出番です。グッっと食いしばって緊張している筋肉をボツリヌストキシンの効果でリラックスしてあげるのです。ちなみに歯科では「噛む」ための筋肉である咀嚼筋のうち『咬筋(こうきん)』に注射をします。咬筋は下顎のエラと呼ばれる部分にある下顎骨と頬骨にかかる板状の筋肉です。咬筋の発達している方では強くかみしめると筋肉の盛り上がりを感じることができます。

ちなみにボツリヌス注射により歯ぎしり・食いしばりを全くしなくなるということはありません。しかし、筋肉自体の動きや収縮をゆるめることはできます。その結果歯ぎしり・食いしばりによる力の影響を少なくすることが期待できるのです。

なお、咬筋(噛むための筋肉)がゆるむため、施術後は固いものが少し嚙みづらかったり、顎が疲れやすくなったりするなどの症状が表れます。しかしボツリヌス注射の作用は可逆性のためしだいに効果が薄れ咬みづらさや顎の疲れなども解消されていきます。通常1~2週間で効果があらわれ、1~2ヶ月で安定しピークに達します。個人差はありますが、その後は徐々に効果が薄れ半年ほどで効果がなくなります。そのため、万が一薬が効きすぎた場合でも時間の経過とともに“元の状態”に戻るという安心感があります。

実は先日当院の歯科衛生士がボツリヌス注射を打ちました。食いしばりからくる頭痛や肩こりのための治療です。やはり1週間程度で「固いものが噛みづらい」という症状がでてきたようです。

 

以下にボツリヌス注射のメリット・注意点を記します。

メリット

・施術時間は10分程度で、施術後すぐに帰宅できる

・マウスピースの装着が苦手な方は毎晩の装着による煩わしさから解放される

(ただしできればマウスピース、ナイトガートとの併用がのぞましい)

・副作用がほとんどなく、可逆的である

・反復的にボツリヌス注射をすることにより効果の持続時間が長くなり、だんだんと注射の間隔が長くなるもしくは打つ必要がなくなる傾向がある

 

注意点

・接種患部が内出血することがある。しかし通常1週間程度で消失する。

・効果が出にくかったり、効果が低下したりしても基本的に2ヶ月程度は再接種ができない(抗体ができるのを防ぐため)

・ボツリヌス注射に限らないが、異物の注入により軽度のアレルギー反応を起こすことが稀にある

・妊娠を望む場合、最終投与後から女性は月経2回、男性は3ヶ月を経過するまで避妊をする必要がある。

・歯科においては保険適応外のため、自費治療になる

 

さて、本日は歯ぎしり・食いしばり治療の1つ、ボツリヌス注射についてお話しました。無意識化での症状のため自分でコントロールすることが難しいのが歯ぎしり・食いしばりです。しかし放っておいては歯やその周辺組織にダメージを与えてしまいます。現在歯ぎしり・食いしばりにお悩みの方、ボツリヌス注射で力のコントロールをしてみませんか?ビバ歯科・矯正小児歯科では院長のセキモトが施術しますのでまずは一度当院までお電話にてご相談下さいね。

医院概要

医院名 ビバ歯科・矯正小児歯科
住所 〒273-0002
千葉県船橋市東船橋1-37-10
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電話番号 047-421-0118
最寄り駅 JR総武線「東船橋駅」南口 徒歩30秒
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駐車場 敷地内に5台分の駐車場があります
休診日 水曜(第1週)・木曜(第2週以降)・日曜・祝日