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赤ちゃんの舌って、鍛えていますか?

こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

みなさんは『口腔機能発達不全症』という言葉を聞いたことがありますか。これは小児(15歳未満)で障がいがないにも関わらず「食べる」・「話す」・「呼吸をする」などの口の機能が十分に発達していない状態をいいます。小児期に口の機能が正常に発達しないと歯並びに悪影響を及ぼすことはもちろん、誤った呼吸により扁桃肥大やアデノイドを起こし、そこからイビキ、無呼吸症候群など様々な弊害をもたらす原因になります。そしてその結果として、成長ホルモンの分泌が悪くなった場合、低身長などの発育障害、集中力の低下や記憶力の低下などの学習障害などを生じてしまうこともあります。

とは言え、口腔機能発達不全症は生まれつき骨格や筋肉の発達に影響を与える病気(ダウン症・巨舌症等)ではないため、日常生活での癖や習慣を見直したり、必要なトレーニングをしたりすれば改善が見込める状態です。ちなみに口腔機能発達不全症と疑われる状態はいくつかあります。

 

□離乳食がすすまない

□食べ物の噛み方がおかしい

□食べるのに時間がかかる

□食べるときの飲み込み方がおかしい

□食べ物を丸のみしてしまう

□食べこぼしが多い

□発音がおかしい

□常に口呼吸をしている

□歯がなかなか生えない

□指しゃぶりがやめられない 等

 

ただ、これらの症状というのは「食べるのが遅いな」とか「食べこぼしが多いな」というように個々のお子様の成長の度合いとも認識され、保護者の方も見逃しがちです。ではどうすればよいのか。それはもう乳児期、すなわち赤ちゃんの頃から正しいお口の成長を促すことにかぎります。変な習慣がついてしまう前に、正しいお口の使い方、もっと言うと正しい舌の使い方を身につけるのです。

そこで今日はお口の機能を正常に発達させるための、乳児期からのお口のトレーニング、とりわけ舌のトレーニングについてお話しします。ぜひ最後までお付き合いくださいね。

 

働きものの「舌」

まずは舌についてのお話です。いつもお口のなかにひっそりと身をひそめている“舌”ですが、実は私たちヒトにとって、とても重要な働きをしています。

味覚

舌の表面には味を感じるセンサーで「味蕾(みらい)」があります。味蕾は味を感じる細胞の集まりで、甘味・苦味・塩味・酸味などを感じることができ、この働きにより人は食を楽しむことができます。

 

嚥下

嚥下(えんげ)とは食べ物を飲み込み、口から胃へ送り込む一連の流れをいいます。その中で、重要な働きをしているのが舌です。食べものを口にいれるときには、まず前歯で噛みきり、それを舌でキャッチします。そしてすぐに食べ物を上下の奥歯の間に運びモグモグと咀嚼をします。その際に食べ物がしっかり噛めるように食べ物の固定するのも舌です。そして食べ物が飲み込める形になると舌で食べ物をのどに押し込みます。また飲み込みがしやすいように食べ物とだ液を混ぜ合わせるのも舌の働きです。

 

発音

言葉を発する時は、肺から押し出された空気が声帯を通り、音がつくられ、さらに舌の巧みな動きによって異なった音に変化します。例えばタ行では舌の前方が、ラ行では舌の先端を動かして発音します。実際に声にだしてみると舌の動きがわかるとおもいます。

 

呼吸

ヒトは鼻呼吸が正しい呼吸です。鼻のフィルター通すことで異物を排除し、適度に加湿・加温された空気を取り込めるからです。しかし、舌のポジショニングが上手にできていない場合、口呼吸を誘発する場合があります。その結果が低位舌(ていいぜつ)です。

ここで下のイラストをご覧ください。

舌の正しい位置はその先端が上の前歯のすぐ後ろにあり、しかも舌全体が上顎に吸い付いている状態です。しかし低位舌は舌が下顎の方にだらりと下がっており、前歯を押したり奥歯の歯の間に入り込んだりしている状態になります。そして青い矢印にも注目してみましょう。これは空気の流れを表しています。舌が正しい位置にあると口をふさぐ形になるため口から空気が入りにくく、これは自然と鼻呼吸を促します。しかし低位舌の場合はどうでしょうか。上顎と舌の間の隙間から空気が入りやすくなるため口呼吸の癖がついてしまうのです。そして冒頭触れたように誤った呼吸は様々な弊害を引き起こします。不正咬合と呼ばれる歯並びの悪さもその1つです。

 

どうでしょうか。いかに舌が大切な役割をしているのかわかっていただけたと思います。

※口腔機能発達不全の例や幼少期のお口の中のトラブルについては以下のブログでも詳しくご説明しておりますのでぜひ参考にしてください。

 

乳児期からの舌のトレーニング

前置きが長くなりましたがここから本題に入ります。まずは乳児期からできる舌のトレーニングについてです。お子様の成長や体調をみながら、ぜひ舌を鍛えていきましょう。

母乳中心の哺乳をする

赤ちゃんが母乳を飲む際には、舌・唇・顎などお口周りの筋肉を使う必要があります。これらを上手に動かすことで鍛えられていくのです。そしてその中で母乳の3原則があります。『吸着』・『吸啜(きゅうてつ)』・『嚥下』です。1つひとつみていきましょう。

まずは吸着です。これは唇と舌で、乳首・乳輪部をほおばり双方の密着状態を維持することです。お口の周りの筋肉を使い、唇を乳頭部に密着させることで口角から母乳が漏れるのを防ぎます。

次に吸啜です。吸啜とはお口のなかに入ってきたものを吸いついて啜る(すする)動作のことです。赤ちゃんが母乳を飲む時には、舌を上顎に押し付けて乳首をしごくようにして吸います。そして舌の奥が下がると同時に陰圧で母乳を搾り出して飲みます。この一連の流れの中で舌を上下させることが舌のトレーニングにつながります。

最後に嚥下です。嚥下とは食べ物や飲み物を飲み込み、食道から胃へと送り込む動作のことです。この時期は乳児嚥下と呼ばれ、舌を前方に突き出したまま、お口をあけたままというのが大きな特徴です。

以上3つの動作を身につけることで上手に母乳を飲むことができるのです。これらの哺乳運動は舌をはじめお口周りの筋肉を正常に発達させ、さらに脳への刺激となり発育によい影響を与えます。もちろんお母さんの体調にもよりますので、できる範囲で取り入れてみましょう。

 

飲み物はコップで飲む

ストローやスパウトを使って飲み物を飲むことは異常嚥下癖を誘発しやすくなります。すなわち母乳を飲む時のような乳児嚥下の癖が残り、正常な嚥下への移行ができなくなります。本来、ものを飲み込む際には、唇と顎を閉じ、舌を上顎につけながら飲み込みます。しかしストローやスパウトを使うと舌が下の前歯の後ろあたりにあるまま飲み込んでしまいます。こちらも試しにやってみると“舌の位置のちがい”がわかるはずです。

この乳児嚥下のまま成長した場合、「ものを飲み込むときに舌が前に突き出る」、「飲食物をよくこぼす」など弊害がでてくることもあります。そして舌が上にあがる習慣がないため、先述の低位舌にもなりやすくなります。そのため少しずつコップ飲みの練習をし、唇を閉じることや舌をあげることの練習をしていきましょう。

乳児期からのお口のトレーニング

続いて、お口周りのトレーニングについてです。お口周りの筋肉をつかうことは正常な成長を促します。

 

指しゃぶりを卒業する

出生後しばらくの指しゃぶりは、原始反射*を消して口腔機能の発達を促進します。ただし3歳以降の指しゃぶりは、お子様の正常な発達を妨げることがあります。具体的には歯並びや咬み合わせのズレなどです。特に上顎前突(=出っ歯)や開咬(上下の前歯が咬みあわない)などの症状です。実際に指しゃぶりをしてみるとわかるとおもいますが、しゃぶる際に上の前歯を外側に押すようになりませんか?これらの影響が後の歯並びに悪い影響を及ぼすのです。ただし、指しゃぶりは精神的な安定を得るために必要な行動でもあります。そのため無理にとめることはNGです。手遊びをしたり、指しゃぶり防止のマニキュアをつかったり、手を握ったりなどして、赤ちゃんの意識を指から遠ざけましょう。

*原始反射…赤ちゃんが様々な刺激により無意識に反応する動作のこと

 

歯固めを積極的にする

生後6ヶ月頃から前歯が生えてきます。歯が生えてきたら歯固めを積極的におこないましょう。歯固めをすることでの主なメリットは次の2つです。

  • 噛む練習になる

母乳を飲むときは吸うことがメインです。しかし乳歯が生えてきて離乳食デビューをすると“噛む”ことが必要になります。そしてこの時期に噛む練習をすることは奥歯での咀嚼の練習にもなります。今は、見た目も可愛らしい歯固めのおもちゃがたくさん販売されています。ぜひ赤ちゃんがお気に入りのおもちゃで歯固めをたくさんしてくださいね。

 

  • 顎や歯の成長を促進する

おもちゃを噛んで歯固めをすることは、歯ぐきや顎などのお口周りの成長を促します。そして顎が正常に発達することは歯が並ぶスペースの確保になるため、歯がきれいに生えてきやすくなります。こちらのブログ『子どもの歯列矯正、いつするのが良い?』でも触れましたが、歯は顎の大きさにあわせて生えてきます。つまり顎が小さければ歯は窮屈に生え、ガタガタした歯並びになってしまいます。乳児期から歯固めを積極的におこなうことで将来の歯並びにも備えましょう。

足をつけて食事をさせる

足をブラブラさせたまま食事をしているお子様をみたことはないでしょうか?これは姿勢が悪くなるのはもちろん奥歯に力をいれて噛むことができないので、誤った嚥下習慣がついてしまいます。逆に、床や足台などにしっかりと足をつけて食事をすることは正しい姿勢で、かつ奥歯でしっかりと嚙むことができるので正しい嚥下が身につきます。そして噛む習慣は舌やお口周りの筋肉を鍛えます。離乳食デビューをしたら、“地に足をつけて”食事をするようにさせましょう。

 

鼻呼吸を促す抱っこと寝かせ方

ヒトの正しい呼吸は鼻呼吸です。しかし乳児期の姿勢によっては口呼吸になってしまうことがあります。そのため、鼻呼吸を促す抱っこと寝かせ方を心掛けましょう。まず首が座るまでの抱っこですが、頭が後退しないよう、まるまる抱っこがおすすめです。また赤ちゃんを寝かせる際には、体丸く包み込むように意識してください。これらは赤ちゃんがお母さんのお腹にいたときのCカーブの背骨の姿勢です。首が座るまでのあいだはこのCカーブを意識しましょう。

ハイハイで筋力をつける

生後8~10ヶ月になると、手と足をつかってハイハイをし始めます。ハイハイの姿勢は首を上にもちあげるため、首回りの筋肉をつけ体幹を鍛える練習になります。そして首回りの筋肉がしっかりとすることは正常な呼吸と嚥下を身につけるためにとても大切です。

遊びで筋力をつける

頬を膨らませたり、口を尖らせたりするようなおもちゃはお口周りの筋肉のトレーニングにつながります。例えば“風船”です。風船はそれをお口に加えたまま唇を固く閉じ、そして息を送り込みます。そしてそのときにはお口から息を吐くので、鼻で呼吸をすることも必須です。同じようなおもちゃに“水笛”、“吹き戻し”などがあります。お子様が楽しみながらトレーニングできるお気に入りをみつけてみましょう。

ちなみに、冒頭でご紹介した口腔機能発達不全症は2018年に健康保険適応での治療が認められるようになりましたが、日も浅いこともあってかまだまだ広まっていないように思います。
しかし、乳児期からの舌やお口周りのトレーニングがお子様の正常な発育に効果を発します。『三つ子の魂百まで』ということわざがあるように、子どものときに身についたお口の癖は高齢になっても変わらないことが多いです。例えば成人期の不正咬合・肥満・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群、そして高齢期になってからの歯や口の機能低下いわゆるオーラルフレイル・誤嚥性肺炎などの発症です。お子様の健康的な成長を見守るためにも、ママパパのできる範囲でぜひ取り入れてみてくださいね!

 

最後に

「〇〇についてブログに書いてほしい」などのリクエストや「△△って何?」などのご質問も随時受け付けております。以下いずれかよりぜひご連絡いただければ嬉しいです!

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