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歯が長くなった!?それ「歯肉退縮」が原因です
こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。
『最近、歯が長くなったかも…』
このように感じている方はいませんか?歯が生える途中であればこんなこともありますが、永久歯がすべて生えそろったあとに歯が長くなることはありません。実はこれ歯茎が下がったこといわゆる「歯肉退縮」が原因です。歯肉が下がったがために相対的に歯が長くなったように見えるのです。なお歯肉が下がると口元の見た目が悪くなるばかりか歯そのものにも悪影響があります。そこで今日は歯肉退縮の原因と症状、そしてその予防についてお話しします。ぜひ最後までご覧下さいね。
歯肉の種類
歯肉は一般的に歯茎(はぐき)とも呼ばれます。歯肉は歯を支える歯槽骨を覆い、それと接合している粘膜組織です。歯肉で起こる「腫れ」「出血」、そして「変色」などは歯周組織に異変が起こっていることを知らせてくれるため、歯肉は大切な役割を担っています。ちなみに歯肉は大きくわけて“遊離歯肉”と“付着歯肉”に区別されます。遊離歯肉は歯から離れており歯肉溝を形成しています。普段フロスを食いこませている部分ですね。それに対して付着歯肉は歯槽骨とぴったりくっついていて動きません。そして付着歯肉が歯根部分や歯槽骨を覆っていることで細菌の侵入を防いでいるのです。しかし歯周病で歯周ポケットが深くなると付着歯肉が減り、菌が歯周組織をダイレクトに攻撃することになります。そのため付着歯肉を維持することは歯や歯周組織を守るために必須です。なお付着歯肉はこのあとのお話に関わってきますので覚えておいてくださいね。
メイナードの分類
歯肉の種類について知った上でもう少し詳しくみていきます。
実は歯肉退縮の原因は多岐にわたります。例えば「遺伝によるもの」、「不適切なお口のケアによるもの」、そして「悪しき生活習慣によるもの」などです(詳しくは後述)その原因の大半は自身の行いを見直すことで取り除けますが、1つだけ自力ではどうにもならないものがあります。それが遺伝によるものです。『生まれ持った歯肉の厚み』や『歯槽骨(歯を支える骨)の厚み』によって、歯肉退縮のリスクが決まると言われています。この歯肉退縮のリスクを示す分類がメイナード分類です。次の4つのタイプがあります。Type1が歯肉退縮のリスクが最も低く、Type4が最もリスクが高いとされています。とにかく歯槽骨が厚いほど歯肉退縮のリスクは減るということですね。逆に歯槽骨も歯肉も薄いType4はダメージを受けやすいので危険です。
このように歯肉退縮のリスクは生まれ持っての個人差があり、『歯槽骨の厚み』と『歯肉の厚み』によって歯肉退縮になりやすいかどうかが決まります。そしてここに以下で述べる後天的原因が作用することで歯肉退縮がさらに進むことになるのです。
歯肉退縮の原因
歯周病
歯肉退縮の原因にもっとも影響を及ぼすと考えられているのが「歯周病」です。歯周病は歯と歯肉の隙間いわゆる歯周ポケットから侵入した細菌が歯ぐきに炎症を起こし、進行すると歯槽骨を溶かす病気です。歯槽骨が溶かされるとそれを覆っている歯肉が退縮します。
歯ブラシの圧が強い
毎食後のブラッシングは必須ですが、過度な力で磨いてしまうと歯肉を傷めてしまいます。そしてその結果歯肉が下がります。また強い力でブラッシングすることは歯の表面のエナメル質も傷つけることになります。なお、毛が「かため」の歯ブラシを使っている方は力の入れ方に特に注意が必要です。歯ブラシは鉛筆を持つように握り、やさしく小刻みに動かすとよいでしょう。
お口の中が不潔
お口のケアが不十分で口腔内細菌が増えると歯肉に炎症が起こり、歯肉退縮の原因になります。特に自分で着脱ができないタイプの矯正装置を付けている場合には装置のところに食べかすや歯垢が溜まりやすいため注意が必要です。タフトブラシ(毛束が1つでヘッドが小さい歯ブラシ)や矯正をしている人でも使えるフロスなどを使い食べかすや歯垢を溜めないようにしましょう。
矯正治療の影響
歯並びを整える矯正治療でも歯肉退縮が起こることがあります。矯正治療では歯に様々な方向から力を加えて歯を移動させます。しかし過剰な力が加わったり、矯正装置に不具合が生じていたりすると歯肉退縮の原因になります。もちろん、適切に行われていればその心配はありません。なお、矯正治療の際に同じ力を加えたとしても先のメイナード分類により歯肉退縮のリスクは変わってきます。
歯ぎしり・食いしばり
就寝中の歯ぎしり・食いしばりは食事中に咬むときよりも大きな力で咬んでおり、歯や歯肉に負担がかかります。これは4の「矯正治療の影響」と同様で、歯や歯周組織に継続的なダメージが蓄積すると歯肉退縮の原因になります。しかしメイナード分類のType1のように、元々歯槽骨にも歯肉にも厚みがある方の場合は歯肉退縮がほとんどおこらないことがあります。
なお歯ぎしり・食いしばりは無意識のため自身での予防は難しいです。そのためナイトガード(就寝中につかうマウスピース)の着用をおすすめします。
詰め物・被せ物が合っていない
むし歯治療で歯を削った際には詰め物や被せ物をしますがこれら補綴物が合っていないと歯肉退縮の原因になります。例えば被せ物が高すぎると噛んだ時にその歯にだけ力が集中します。するとその周辺の歯肉にもダメージが伝わり歯肉退縮の原因になります。また被せ物を装着する際の深さも関わります。被せ物の縁(歯根に近い方)が深すぎると歯周組織を傷つけ周辺の歯肉に炎症が起こることがあります。これも歯肉退縮の原因につながります。
歯並び・かみ合わせの影響
歯が均等にかみ合っていないと特定の歯や周囲の歯槽骨、歯肉などに過度な力がかかります。その結果歯肉が炎症を起こし歯肉退縮の原因になります。例えば八重歯のように歯列から外れている歯がある場合には注意が必要です。そのような歯の周囲は歯槽骨や歯肉が薄いことがあるため、歯肉退縮が起こりやすいです。
喫煙習慣
タバコにはニコチンや一酸化炭素が含まれます。ニコチンは血管を収縮させ血流を悪くし、一酸化炭素は血液中の酸素の運搬を阻害し酸素不足を引き起こします。すなわち喫煙の習慣があると必要な栄養や酸素が歯肉に届かなくなってしまいます。その結果、歯肉退縮が起こります。また喫煙するとだ液の分泌量が減少します。殺菌作用や抗菌作用のあるだ液が減ることは歯周病のリスクを高め、さらに歯肉退縮の原因につながります。これらの一番の予防は「禁煙」です。健康な歯肉のためにも全身の健康のためにも禁煙をしましょう。
貧血
貧血とは血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが少なくなった状態です。ヘモグロビンは酸素と結びつき血流にのりながら全身に酸素を運ぶ働きをします。しかし貧血になると十分な酸素の供給が行われません。特に歯肉全体が白い人は貧血のサインです。これも歯肉退縮の原因になります。鉄分を意識した栄養バランスのとれた食生活や十分な睡眠をとるようにしましょう。
ホルモンバランス
思春期や妊娠、更年期などによりホルモンバランスが乱れることで、歯肉が過敏になり歯肉が退縮することがあります。
特に妊婦さんは妊婦の歯周病すなわち妊娠性歯肉炎に注意が必要です。女性ホルモンの「エストロゲン」や「プロゲステロン」は特定の歯周病菌の栄養になり、菌が爆発的に増殖します。その結果妊婦さんは歯周病の初期症状である歯肉炎にかかりやすく、歯肉に出血や腫れがある状態が継続すると歯肉が下がってしまうのです。
しかし基本的にはプラークがない清潔なお口の中では妊婦性歯肉炎は起こらないもしくは軽度で済みます。そのため一番の予防法は「プラークコントロール」です。毎食後のオーラルケアを丁寧に行いましょう。なお妊婦さんの心配は歯肉が下がることだけではありません。本格的な歯周病に進行すると早産・低体重児出産のリスクがあがるため妊娠中のプラークコントロールは本当に大切です。
※参考:ブログ『マテニティ歯科』
加齢
年齢を重ねると体が衰えるのと同じで歯肉も年齢と共に衰えます。歯肉の萎縮や退化によって歯肉が下がることがあります。しかし正しいブラッシングによりお口の中を清潔に保つことにより歯肉退縮を遅らせることはできます。
歯肉退縮による症状
知覚過敏
歯肉が下がると歯根面が露出します。すると外からの刺激に敏感な象牙質がむき出しになるため、知覚過敏の症状が起こりやすくなります。刺激を感じにくくするお薬を塗ったり、知覚過敏用の歯磨剤を使ったりして症状を抑えることもありますが、それでも治らない場合には最悪神経を抜くということもあります。
食べ物が挟まる
歯肉が下がると歯と歯の間に隙間ができるため、食べ物が挟まりやすくなります。そして当たり前ですが食べ物が挟まったままになると細菌が増え、むし歯や歯周病のリスクがあがります。これ以上歯肉退縮を進行させないためにも歯ブラシはもちろん、フロスや歯間ブラシなども使った丁寧なケアが必要です。
むし歯リスクがあがる
本来歯肉に覆われている歯根部が露出すると象牙質がむき出しになります。象牙質はエナメル質と比べて酸に弱いため、よりむし歯のリスクがあがります。なおこのように歯肉より下の歯根部にできるむし歯のことを「根面う蝕」といいます。自覚症状がほとんどないことに加え、治療が難しいためとてもやっかいなむし歯です。
歯が伸びて見える
歯肉が下がったことで相対的に歯が伸びたようにみえます。
歯が割れやすくなる
歯を守る歯肉が下がってしまうと歯根部が露出します。歯根部は硬いエナメル質に覆われておらず象牙質がむき出しの状態です。象牙質はエナメル質よりも柔らかいため、外から力が加わると割れやすいです。
歯がグラグラする
歯を支える歯肉が下がることで歯がグラグラしてくることがあります。特に歯周病が原因で歯肉退縮が起きている場合には、顎骨も破壊されているため歯の揺れが顕著です。
審美性の低下
歯肉が下がると写真のような「ブラックトライアングル」や「ブラックマージン」があらわれます。特にブラックトライアングルは歯の形状から下の前歯にできやすく、歯が長く見えたり、すきっ歯に見えたりするため見た目に大きく影響します。
ビバ歯科でできる治療
残念ながら、下がった歯肉は自然に治癒することはありません。しかし歯科医院で専門的な治療を行えば症状を改善することができます。
結合組織移植術
健康な歯肉の部分から必要な組織を取り出し、歯肉退縮をした部位に移植する方法です。移植する歯肉は、主に患者様の上顎の奥歯の内側の歯肉から採取し、それを歯肉退縮がある部位に移植します。採取した部分も時間の経過と共に治癒するため問題ありません。具体的には根面被覆術などがあります。
GTR法(Guided Tissue Regeneration)
歯周組織再生療法の一種です。歯肉が下がった部位のプラークや歯石を除去したあとにその部分の歯肉を切開し、骨が破壊された部分をメンブレンという人工膜で覆います。これは歯槽骨が再生するスペースを確保するためです。なぜなら歯肉と骨の回復スピードを比べると、歯肉の方が速く本来骨が回復するはずのスペースに歯肉が入り込んでしまうからです。なお具体的にはエムドゲイン法などがあります。これは歯肉を切開し歯根部の汚れを除去したあとにリグロスやエムドゲイン・ゲルといいうタンパク質を補填し、骨を再生する方法です。そして歯槽骨の容積が増えるにつれて、それを覆う歯肉もできてきます。
*イラストは株式会社メディカルネットより
これらは外科手術を伴うため「怖い」と思われる方もいるかもしれませんが、見た目はもちろん歯の寿命を延ばすことができるのは大きなメリットです。なぜなら本来あるべき歯肉で歯を守り、むし歯や歯周病のリスクを減らすからです。
しかし、外科手術を行うだけでは歯肉退縮の解決にはなりません。つまり、歯肉退縮の「根本的な原因」を取り除くことが必須です。ブラッシング圧が強い人は正しい歯みがきの仕方を身に付けたり、歯ぎしり・食いしばりがある人はマウスピースやボツリヌス注射の治療をするなど、そもそもの原因を取り除く必要があります。
さて今回のブログはとても長くなりましたが最後までご覧いただきありがとうございました。もし「歯ぐきが下がってきたかも…」と悩んでいる方がいらっしゃれば、私たちと一緒にその原因を解決しませんか?ぜひビバ歯科・矯正小児歯科までご相談くださいね。
最後に
「〇〇についてブログに書いてほしい」などのリクエストや「△△って何?」などのご質問も随時受け付けております。以下いずれかよりぜひご連絡いただければ嬉しいです!
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医院名 | ビバ歯科・矯正小児歯科 |
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