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薬で治す歯周病~リアルタイムPCR検査始めました!

こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。

以前「体をむしばむ歯周病」というブログ内で歯周病と全身疾患の関係についてお話しました。歯周病が進行するとお口の中を破壊されるだけではなく、血液中に侵入した歯周病菌によって全身を壊されていきます。ただサイレントキラー(沈黙の病)という異名をもつほどの歯周病菌ですから、歯周病の初期は自覚症状がありません。そしてもちろんお口の中にその菌を目視することもできません。だから自分がどれくらいの歯周病リスクを抱えているかもわからないのです。

 

でも、もし歯周病菌が見えたらどうでしょうか?
しかも、どんな特長をもつ菌がどれくらいいるかまで分かったら?
きっと歯周病菌の倒し方すなわち治し方がわかりますよね。

 

実はそれらを叶えられる検査がビバ歯科にはあります!
今日は“科学的根拠”に基づいた歯周病予防及び治療のお話をしていきます。ぜひ最後までご覧くださいね。

 

歯周病は薬で治る!

ひと昔前までは歯周病治療に、「歯磨き指導」と「歯石除去」が行われていました。しかし、歯磨きには患者様の技術が、そして外科的処置(歯ぐきの切開)を含む歯石除去は歯科スタッフの高度な技術が必要とされ難易度の高い治療でした。そこで現代では薬で歯周病を治す「歯周内科治療」という新しい考えがでてきました。これは歯周病の原因菌を特定し、薬をつかって除菌するという方法です。そのためには、まず患者様が保有している菌が何であるかを特定する必要があります。なぜなら一言に歯周病といってもその原因菌は数十種類あるからです。どの菌かを特定しそれに最も効果のある薬をつかっていくのです。そこで歯周内科治療では顕微鏡でお口の中の菌を観察し、原因菌をつきとめるところから始まります。

 

歯周内科治療の流れ

歯周病内科治療のおおまかな流れは以下の通りです。

①原因菌の特定

◎位相差顕微鏡による歯周病菌の確認
患者様のお口の中から歯垢を採取しプレパラートを作って観察します。菌の様子はモニターに表示されるので患者様と一緒に見ていきます。ここで、「細菌が多いのか」、「真菌(カビ)が多いのか」、そして「歯周病になりやすいのか」など現在のお口の中の状況がわかります。さらに、菌数が明らかに多い方や重度の歯周病の方の場合には、次のリアルタイムPCR法を行います。

  • 球菌・短桿菌(小さく動いている)

  • らせん状細菌(ウネウネしている)

  • 線状細菌(細い線のようなもの)

  • カビ菌(画面いっぱいにある)

◎リアルタイムPCR法で歯周病菌の数を測定
患者様のお口の中から体液(⁂)を採取し、だ液中に含まれる「菌の種類」や「菌の数」を測定します。リアルタイムPCR法はDNAレベルで調べるため位相差顕微鏡よりもさらに厳密な検査です。

⁂ここでいう体液は歯肉の浸出液。詳しくは後述

②除菌

患者様の保有する細菌や真菌に応じて除去薬剤を服用します

・細菌の除去薬剤を服用
・真菌(カビ)除去薬剤を服用もしくはカビ取り歯磨剤での歯磨き

※参考ブログ『飲み薬と抗カビ剤の歯磨きで歯周病を撃退!?

その後、再び位相差顕微鏡もしくはリアルタイムPCR法で除菌状況の確認をします。

 

③歯石除去

除菌をして菌数が減少しても歯石があると菌が増殖してしまいます。ゆえに歯石除去を行い、細菌が増える温床を取り除きます。

 

リアルタイムPCR法とは?

長年ビバ歯科では位相差顕微鏡の結果を参考にして歯周内科治療をおこなっていました。しかし多くの患者様が歯周病の改善が見られたのに対し、残念ながらごく一部の患者様では歯周病がなかなか良くなりませんでした。そのためより精密に原因菌を特定しピンポイントで菌をやっつける術が必要だと考えました。そこで導入したのが「リアルタイムPCR法」です。なお冒頭でも触れましたが歯周病菌という名称は総称です。リアルタイムPCR法では歯周病菌の「菌名」そして「菌数」までを特定していきます。すなわちこれは歯周病菌のDNA検査で、遺伝子学的診断です。

ところでPCR検査と聞くと、新型コロナウイルスのときによく耳にしましたよね。PCRの正式名称は「ポリメラーゼ連鎖反応」(Polymerase Chain Reaction)といいます。この検査では、ごく微量のDNAでも酵素や試薬などの薬品をつかって増幅して検出します。この増幅を繰り返すことで “超”微量な病原体であったとしても、その生物の固有の遺伝子を増幅させることで、その生物が「いるのかいないのか」を調べることができるのです。

 

少し長くなりますがリアルタイムPCR法と従来のPCR法の違いも触れておきます。従来のPCR法はDNAの増幅を何度も繰り返した後に目的のDNAの有無を確認します。しかしリアルタイムPCR法ではDNAの増幅を繰り返すごとに毎回DNAの増幅の有無を調べます。そして何度目の増幅反応でDNAが検出できたかを調べることで元々あったDNAの量も測定することが可能になるのです。ビバ歯科ではこのリアルタイムPCR法を採用することで特に歯周病との関連性が高い細菌について測定します。

 

特に歯周病と関連が高い細菌

◇P. g 菌:Porphyromonas gingivalis(ポルフィノモナス・ジンジバリス)

◇T. d 菌:Treponema denticola(トレポネーマ・デンティコーラ)

◇T. f 菌:Tannerella forsythus(タンネレラ・ファーサイシア)

⇒上記3つの菌は、「Red Complex」(レッドコンプレックス)と呼ばれる歯周病の極悪3菌種です。慢性的な歯周病や再発の原因になると共に、全身疾患の原因にもなります。

 

◇A. a 菌:Aggregatibacter actinomycetemcomitans(アグリゲイトバクター・アクチノマイセテムコミタンス)

⇒慢性歯周炎や侵襲性歯周炎の原因になります。保有率は低い菌ですが、侵襲性歯周炎は症状の進行が速くすぐに重症化します。特に若年層での重度歯周病は侵襲性歯周炎の疑いがあります。

 

◇F. n 菌:Fusobacterium nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム)

⇒プラークの中に多く含まれる菌です。他の細菌とくっつきバイオフィルムを形成するため歯周病菌定着の地盤となる細菌です。近年の研究では大腸がんの発がんや進行との関連を報告されています。

 

◇P. i 菌:Prevotella intermedia(プレボテラ・インターメディア)

⇒女性ホルモンを好むため、思春期の「思春期性歯肉炎」や妊娠期の「妊娠性歯肉炎」が発症する原因になります。

※細菌名は同じ菌を指す場合でも変わることがあります

▲位相差顕微鏡とリアルタイムPCR法では確認できる菌の種類が異なります

 

リアルタイムPCR検査の方法

歯周ポケット(あるいは歯肉溝)にペーパーポイントを挿入し、歯肉の浸出液を採取します。ペーパーポイントは紙でできた細い筒のようなものです。これは根管治療でも水分の乾燥や止血に使用されます。なお採取時の痛みを気にする方がいらっしゃいますが痛くありません。なぜなら歯と歯肉の間の溝に挿入する際には底部より浮かせるからです。また挿入している時間は30秒程ですので短時間で終わる検査です。

なお採取した検体は当院から検査機関に郵送します。そして検査結果が出た後、改めて当院を受診していただきそこで検査結果のご説明と今後の治療方針について確認いたします。

ペーパーポイント

歯と歯肉の境目にペーパーポイントを挿入               (実際には4本挿入します)

 

特におすすめの人

リアルタイムPCR検査は、次のような方に特におすすめの検査です。病気になってからの「治療」ではなく、病気にならないように「予防」するためにもぜひ一度受けていただくことをおすすめします。

 

年齢が40~50代の方

お口の中の悪い菌を1度リセットすることで、老後に自分の歯を残せる可能性が高まります。さらに自分の歯で噛めることは健康寿命を延ばすことにもつながります。

 

妊娠・出産を予定している方

歯周病に罹患している妊婦さんはそうでない妊婦さんの7倍以上もの確率で早産・低体重児出産が起こるリスクがあると言われています。お母さんの健康はもちろん胎児の健康のためにもお口の中をきれいにしておくことは大切です。

 

インプラント治療をする予定の方

お口の中に歯周病菌がいるとインプラント周囲炎になるリスクがあります。これはインプラントを支えている顎骨が溶けて埋入してあるインプラント本体がグラグラになってしまう疾患です。これからインプラントを予定している方は長くインプラントを使うために事前に検査を受けることをおすすめします。

 

更年期の方

更年期でホルモンが減少するとドライマウスが起こりやすくこれは歯周病のリスクを高めます。特に女性は閉経後より骨のカルシウムが低下し骨粗しょう症になりやすいです。骨がもろくなる骨粗しょう症は、歯を支えている顎の骨も弱くしてしまい、より歯周病が進行することになります。そのためリアルタイムPCR検査で歯周病菌の有無や種類を知り予防をすることが大切です。

 

よくある質問

リアルタイムPCR検査や歯周内科治療についてよくある質問をまとめました。

リアルタイムPCR検査の質問

Q.リアルタイムPCR検査は痛いですか?
いいえ、基本的に痛みはありません。ペーパーポイントという筒状の紙を歯と歯肉の溝に挿入するだけですので、ご安心ください。

 

Q.リアルタイムPCR検査は保険適応ですか?
いいえ、自費診療です。当院では¥15,000(税抜)で行っています。

 

Q.リアルタイムPCR検査の結果はどのくらいでわかりますか?
1週間程度です。

 

Q.リアルタイムPCR検査は1回やれば終わりですか?
当院では1つの治療サイクルで2回行います。1回目が治療前で「どの種類の菌がどのくらいの量いるか」を調べます。そして2回目が治療後でクリーニングや除菌を通して「菌が確実にいなくなっていること」を確認します。

 

Q.リアルタイムPCR検査は何歳からできますか?
特に年齢制限はありません。

 

歯周内科治療についての質問

 

Q.細菌や真菌(カビ)用の除去薬剤などお薬だけ購入することはできますか?
いいえ、できません。歯周内科治療は国家資格を有する歯科医師・歯科衛生士が患者様のお口の中を診察し、様々な検査をしたうえで処方する薬の種類を選択していきます。

 

Q.歯周内科治療で使用する薬に副作用はありますか?
基本的に副作用がほとんどないお薬です。しかし、以前に抗生物質や風邪薬で下痢になったという方にはあらかじめ下痢止めを処方しております。ご心配な方、また他に服用中のお薬がある方はスタッフまでお声掛け下さい。なお、稀にアレルギー反応が出現することがありその中にはアナフィラキシーショックもあります。命にも関わりますので、おくすり手帳をお持ちいただくと安心です。

 

Q.タバコはやめなければなりませんか?
タバコは歯周病を確実に進行させます。よってお口の健康を第一に考えるのであれば禁煙されることをおすすめします。またお薬の効果を期待するためにも特に歯周内科治療中は喫煙を控えて頂くようお願いしています。

 

Q.妊娠中も歯周内科治療はできますか?
いいえ、妊娠中は歯周内科治療を行っておりません。母体及び胎児の安全を第一に考え、内服薬の処方を控えているからです。そのため、妊活などをお考えの方はパートナーの方(⁂)と一緒に事前に歯周病の検査、治療をすることをお勧めします。
⁂…歯周病はだ液を介して人から人に感染する感染症です。キスやくしゃみ、コップの回し飲みなど日常生活での行動が感染経路になります。