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子どもの睡眠時無呼吸症候群~イビキがあったら要注意

こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。睡眠時無呼吸症候群という言葉を聞いたことはありますか?これは睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。眠りの質が悪くなるだけではなく、血液中の酸素が不足するため脳や心臓など全身に影響を及ぼします。なお睡眠時無呼吸症候群はその原因から次の3つのタイプに分類されます。今回のブログではこの中でも罹患者の9割以上を占める閉塞性睡眠時無呼吸症についてお話します。ぜひ最後までご覧くださいね。

1.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(以下OSA:オーサ)
空気の通り道の気道が物理的に狭くなり呼吸が止まる。罹患者の9割以上が該当。

2.中枢性睡眠時無呼吸症候群
脳から呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の異常による。閉塞性よりも重症とみなされる。

3.混合型睡眠時無呼吸症候群
閉塞性と中枢性の混合した病態。

体をむしばむ“睡眠負債”

本題に入る前に睡眠負債(すいみんふさい)について触れておきます。睡眠負債とは睡眠不足が積み重なり心や体に悪影響を及ぼしている状態を指します。いわば睡眠の借金ですから、早急に返済(十分な睡眠時間の確保)することが大切です。

\こんな症状があったら睡眠負債/
日中の眠気、疲労蓄積、記憶力低下、集中力低下、注意力散漫(ADHD等)、免疫力低下、高血圧、糖尿病のリスク上昇、呼吸器疾患の増悪 等

ちなみに似た言葉に睡眠不足がありますよね。これらの違いは、睡眠不足は短期的な睡眠時間の少なさなのに対し、睡眠負債は慢性的に睡眠時間が不足していることを指します。

では睡眠負債はいつから始まっているのでしょうか?
このように問いかけると多くの方が「大人になってからですよね?仕事や家事で忙しいし…」と回答します。しかし、実は子どもの時から既に睡眠負債が始まっていると言われています。そのため子育て中の保護者様はお子様の睡眠状態を注意深く観察することが大切です。このあと、睡眠負債の原因にもなりうる子どもの睡眠時無呼吸症候群について詳しくお話します。

子どもの閉塞性睡眠時無呼吸症候群

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea:以下OSA)は空気の通り道の気道が物理的に狭くなり、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。子どもの場合完全に呼吸が止まるというよりは、呼吸がしにくい状態が継続します。すなわち呼吸の浅い状態が続くので苦しそうに息をするのが特徴です。脳や体に十分な酸素が取り込まれないため、睡眠が断片的で質が低下します。お子様の心身の成長や発育に多大な影響があるため早期発見が大切です。

\症状/
・イビキ
・睡眠中の呼吸困難
・うめき
・大量の寝汗
・寝返りの多さ
・日中の眠気
・夜尿症

なお睡眠の質が低いことで成長ホルモンの分泌が足りず、合併症として以下のような問題が生じることもあります。イビキや苦しそうな寝息があればOSAを疑うサインです。保護者様は躊躇せずに早急に医療機関に相談しましょう。

\合併症/
・低身長
・言語の発達遅延
・学習障害(集中力低下、記憶力低下等)
・注意欠陥多動性障害(ADHD)
・心血管疾患(高血圧、肺性心等)

子どものOSA~発症時期と原因

発症頻度については2つのピークがあります。

1.2~8歳頃
この時期は咽頭扁桃や口蓋扁桃が肥大します。咽頭扁桃の肥大(=アデノイド)は鼻からの空気の通りを遮り、また口蓋扁桃肥大(=トンシル)は喉の奥の気道を狭めてしまうため、睡眠中の呼吸が浅くなります。すなわちOSAの原因です。

2.思春期頃
この時期は成長や第二次性徴に伴い体重が増加します。肥満は喉や首の周りの脂肪が蓄積し気道が狭まるためOSAの重大な原因になります。

余談ですが、ダウン症、口唇口蓋裂などの顎顔面形態の先天異常、脳性麻痺、ADHDなどの障害をもったお子様はOSAの罹患率が高いと言われています。そのため上記2つのピーク時関係なく発症するリスクがあります。保護者の方はお子様の睡眠時の様子に注意してください。

子どものOSAの特徴

歯科ではOSAの確定診断はできません。スクリーニングに留まります。しかしながら詳細に口の中を診たり頭蓋骨のレントゲンを撮影したりする歯科では、咽頭扁桃や口蓋扁桃肥大を発見する機会はとても多いです。また問診の中でイビキの相談をうけることも多くOSAを疑うきっかけになります。最終的には医科に紹介することになりますが当院では以下のような特徴からOSAの可能性を疑います。ぜひ参考にしてください。

\口腔内の特徴/
・不正咬合(上顎前突/過蓋咬合)
・低位舌
・口呼吸
・舌が大きい
・口蓋扁桃の肥大
・咽頭扁桃の肥大

\その他/
・顔貌の特徴(上下口唇の弛緩/お口ぽかん/下顎の後退/面長)
・くぐもった声(口蓋扁桃肥大の可能性)
・鼻声(鼻閉やアデノイドの可能性)
・低身長
・夜尿症
・陥没呼吸(呼吸困難のサイン)

繰り返しになりますが、歯科ではOSAの可能性がある患者様に気が付くこと多いです。例えば当院では幼少期や思春期を迎えたお子様が矯正治療を希望して多く来院されます。矯正治療の際には事前に精密検査としてパノラマ、セファロレントゲンそして3DCTなどを撮影しますが、その際に気道の狭さが顕著にわかる場合もあります。

OSAの治療

鼻炎による鼻閉であれば点鼻薬などの薬物療法、肥満であれば生活習慣の改善や食事の管理など、原因によりアプローチ方法は異なります。ここでは主に歯科での治療方法についてご紹介します。

口腔筋機能療法

 口腔筋機能療法(Myofunctional Therapy:以下MFT)は口周りの筋肉を鍛えることで口腔機能の改善を目指す治療法です。嚙み合わせ、嚥下、発音などの改善を目的におこなうことが多いですが、睡眠時無呼吸症候群の予防や改善にも効果が期待できます。

◎口呼吸やお口ぽかんの改善
・口テープ
唇に縦にテープを貼ります。必然的に口が閉じるのでそのまま鼻で呼吸をするようにしましょう。初めは数分から始め徐々に時間を伸ばしていきます。慣れてきたらテープをしたまま鼻歌も歌ってみましょう。MFTは一朝一夕で効果が見込まれるものではありません。そのためお子様が楽しく継続してトレーニングできるように工夫すると良いでしょう。ただし鼻炎で鼻呼吸ができない時には口テープのトレーニングは危険です。やらないようにしましょう。

・エアブクブク
水を含まない状態でブクブクうがいをするように口を動かします。左右に加えて口の上の方、下の方にも水があるつもりでブクブクと口を動かしましょう。この時しっかりと唇を閉じることで口周りの筋肉が鍛えられます。

◎低位舌の改善
・ポッピング
いわゆる舌鳴らしです。舌を上顎にぴったりとくっつけた後、口を大きく開けて舌を勢いよく離します。この時“ポン”と音が出たら大成功です。保護者の方もお子様と一緒に取り組み、「どちらが大きな音が出せたか」など勝負をしてみるのも面白いかもしれません。

矯正歯科治療

矯正歯科とは歯を動かすことにより、歯並びや咬み合わせを改善する治療です。審美面ばかり注目されがちですが、正しい咬み合わせになることは全身の健康に影響します。

◎拡大矯正
拡大矯正とは上顎の成長を促す治療法です。 先程子どものOSAの所見として、不正咬合があるとお話しました。この原因になるのが上顎の劣成長です。つまり上顎の成長不足で口の中の容積が狭いため、歯が正常に並べないのです。また顎が小さいことはすなわち口の中の容積が小さいことを意味します。本来上顎の成長には舌のアイロンと言って舌が上顎を押し上げる力が必要です。しかし口の中の容積が小さいとそもそもの舌が動けるスペースが限られるため、舌が上顎を押すことができません。そのため歯科では写真のような拡大装置を使用して上顎の成長を促します。どちらの装置にも特殊なネジが組み込まれているため、そのネジを少しずつ回すことで装置を左右に拡げ顎を拡大していきます。 

【床矯正】
入れ歯のように取り外し可能なため、食事や歯磨きの際にも快適です。ただし1日の装着時間(14時間以上)を守らないと十分な治療効果は期待できません。

床矯正

【ブルドーザー】
広範囲の拡大ができるため上顎に加えて鼻腔の拡大にも期待ができます。ただし取り外しができないため食事や歯磨きの際に不便を感じることもあります。

ブルドーザー

◎ランパセラピー
ランパセラピーは矯正治療の1つですが、骨格レベルで矯正するという特長があります。例えば先述の拡大矯正は基本的に歯列の成長を促します。しかしランパセラピーではより広範囲の骨格の矯正を目的にしています。

\ランパセラピーの効果/
・上下の顎の位置や大きさの改善
・お口ポカンの改善と鼻呼吸への習慣付け
・中顔面の上前方への成長を促しメリハリのある顔立ちにする
・気道が広がりイビキやOSAの改善につながる 等

もちろんランパセラピーにより歯並びが整うといった成果はあります。ただこれはランパセラピーにより骨格の歪みや劣成長が改善された結果の副産物にすぎません。すべてはランパセラピーにより歯が並ぶ土台(=顎骨)が整ったことによるのです。そのため通常の矯正治療で言われるような「歯の後戻り(歯が元の位置に戻ってしまうこと)」が、ランパセラピーは起こりにくいのも特長です。しかしながら難易度の高い治療のためランパセラピーを取り入れている歯科医院は国内でもごくわずかです。そのためビバ歯科には県外から通院されている患者様も多くいらっしゃいます。

CPAP療法

CPAP*(シーパップ)とは内科的治療の1つです。イラストのように装置本体からエアチューブ、鼻マスクを介して気道内に空気を送り込み、気道を広げることで睡眠中の無呼吸を防止する治療です。ただし成長段階にあるお子様の場合、装置を付けるで、顔面の成長を阻害してしまう可能性がゼロではありません。これではOSAの症状を助長することになりよってお子様にCPAPを使用するか否かは医師による慎重な判断が求められます。
* CPAP:Continuous Positive Airway Pressureの略。日本語では持続陽圧呼吸療法とも呼ばれています。

ビバ歯科の方針

ビバ歯科では矯正治療を希望して学童期のお子様が来院されるケースが多いです。そして当院では矯正治療をスタートするにあたり問診や術前診査を通じて、歯並び“以外”の問題点にも注力します。例えば「鼻閉による鼻炎(口呼吸・お口ポカンの原因)」、「トンシル・アデノイド(口呼吸・イビキの原因)」・「低位舌(上顎の劣成長の原因)」、「イビキの有無(OSAの可能性)」などです。なぜならこれらの問題点を改善しなければ、例え矯正治療をしたとしても歯の後戻りのリスクが高まるからです。

話をお子様のOSAに戻します。ブログの冒頭で触れた睡眠負債についてですが、これを解消するためにも子どものうちにOSAの治療をおこなうことはとても大切です。そうすることで成人してからのOSAの再発予防もしくはOSAの発症予防に繋がるからです。これはまさに小児のOSAの治療の究極の目的と言えるでしょう。

さて、最後に睡眠時無呼吸検査について触れておきます。当院では矯正治療をスタートするにあたりOSAが懸念される患者様に睡眠時無呼吸検査を推奨しています。これはフクダ電子より貸与される器機を使用し、AHI(1時間あたりの呼吸が止まる回数)やSpO2(血中酸素濃度)を測定します。小児の場合AHIが1.5回以上の場合OSAと診断されます*。また成人の場合にはAHIが5回以上でOSAの診断です。またSpO2はパルスオキシメーターで測定できる血中酸素濃度を示す数値です。こちらは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大流行した際に連日報道されたこともありご存じの方も多いかもしれませんね。SpO2は健康な人の場合96~99%が基準値とされています。しかしOSAの症状があったり、もしくは呼吸器疾患があったりすると基準を下回ります。実際に当院で睡眠時無呼吸検査をおこなったお子様の中にはSpO2が90%を下回る子もいらっしゃいました。しかしランパセラピー治療の1回目のクールが終わったあとに大きく改善していますのでご紹介します。

*OSAの判断基準であるAHIの回数についてはまだ確定しておらず、現時点ではAHI1.5以上と言う基準が多く支持されています。そのため今後変更になる可能性もあります。

対象の患者様は6歳男児です。来院のきっかけは歯並びの乱れや咬み合わせ問題に関する相談でした。ただ問診や診査をする中で、イビキや気道の狭窄などの症状があり、OSAが疑われたため睡眠時無呼吸検査をおこないました。

◆治療内容:ランパセラピー
◆治療期間:1クール(5ヶ月程)
◆治療成果:
①気道の拡大
②術前はAHIが7.2回でOSAの診断だったが、ランパセラピーの1クールを終えたあとはAHIが1.7回まで減り正常値に近づいた。
③術前はSpO2が75%で重篤な状態だったが、ランパセラピーの1クールを終えたあとはSpO2が92%に回復し大きな改善が見られた。
◆想定されるリスク:
・口腔内に矯正装置を固定したまま生活します。汚れが蓄積しやすいので通常以上に丁寧な歯ブラシでのケアが必要です。
・口腔内装置が口の粘膜と擦れることで口内炎ができることがあります。

なお、ランパセラピー中におこりうるトラブルとその対処法については以下のブログで詳しくお話しています。ぜひご覧ください。