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歯ごたえを感じる歯根膜

こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。
みなさん食べることはお好きですか?ブログの筆者は1日の中で食事の時間が1番の楽しみです。甘い物・辛い物・酸っぱい物どの味も好きで、毎日3食必ず食べています。ところで食事の楽しみと言えば、味もさることながら“歯ごたえ”も大切ですよね。
ポテトチップスを食べるときの「パリッ」
プリンを食べるときの「ぷるぷる」
大福餅を食べるときの「もちもち」
納豆を食べるときの「ネバネバ」
少し考えただけでもたくさん出てきます。ところでこの“歯ごたえ”ですが、どのように脳に伝わるかをご存知ですか?この質問をすると多くの方が「歯」と回答します。確かに食べ物を噛むのは歯です。しかし実は歯ごたえを感じるのは歯ではありません。ではどこか。歯茎か?骨か?もしくは神経か?
正解は「歯根膜(しこんまく)」と呼ばれる組織です。あまり聞きなれない言葉かもしれませんね。このあと詳しくお話していきますのでぜひ最後までご覧ください。
目次
歯根膜とは?
歯は歯槽骨(しそうこつ)いわゆる顎骨に支えられています。そして歯と歯槽骨の間には薄い膜があり、これが歯根膜(しこんまく)です。歯根膜はその名の通り、歯の根っこである歯根の周りを覆っています。厚みは0.3mm程ですが歯を守るためにとても重要な役割を担っています。また歯根膜を構成しているのはシャーピー繊維と呼ばれる繊維の束です。イラストを見ながらもう少しだけ詳しく見ていきましょう。
歯を支えている周囲の組織のことを歯周組織と呼びます。それは主に「歯肉」、「歯根膜」、「セメント質」、「歯槽骨」の4つで構成されています。この中でセメント質は歯根の表面を覆っている硬組織です。そして歯根膜を形成しているシャーピー繊維が、セメント質と歯槽骨を強固に結合することで歯が固定されるのです。そのため歯根膜は歯の靭帯とも呼ばれています。

歯根膜の役割
歯根膜には主に3つの役割があります。
役割1:歯の固定
前述の通り、歯根膜(シャーピー繊維)が歯根部のセメント質と歯槽骨を固定します。私たちが食べ物を噛んでもとりわけ粘着力のある餅などを食べても歯が抜け落ちないのは歯根膜のおかげです。なお、歯周病が進行すると歯がグラグラするのは、歯周病菌により歯根膜が破壊されるためです。
役割2:力を吸収するクッション
食べ物を噛む時や食いしばりをする度に、歯には負荷がかかっています。特に睡眠時の食いしばりの際には自分の体重と同程度もしくはそれ以上の力がかかると言われています。このような力を吸収し歯への衝撃を和らげる役割をしているのが歯根膜です。言うなればクッションですね。歯にかかる力を吸収・分散することで歯を守っているのです。
役割3:刺激を感知するセンサー
歯根膜は噛んだ時の感覚の情報を脳に送る働きがあります。この働きがあるからこそ、私たちは食事の際に、食べ物の「硬い」「柔らかい」の感覚や、天ぷらの「サクサク感」、お餅の「モチモチ感」などの食感を楽しむことができるのです。また硬いものを食べる時は強い力で噛む、柔らかいものを食べるときは弱い力で噛むといったように噛む力をコントロールできるのも歯根膜のおかげです。ちなみに髪の毛1本でも口の中にあれば違和感がありますよね?それくらい歯根膜は高感度なセンサーです。
歯根膜の病気
代表的なのが歯根膜炎(しこんまくえん)です。これは歯根膜が炎症を起こす病気です。なお歯根膜炎はその原因により大きく2つに分けられます。
感染性歯根膜炎
むし歯菌や歯周病菌など細菌が原因の歯根膜炎です。
【治療法】細菌が原因のため歯内療法が中心になります。歯内療法とは抜髄(神経を抜く)や根管治療(根っこの治療)、場合によっては抜歯(歯を抜く)などを行います。また上下の歯が接触した時に痛みがある場合には、あたる部分を少し削って咬合調整なども行います。

非感染性歯根膜炎
歯ぎしりや食いしばり、外傷、また咬み合わせの悪さなど物理的な刺激が原因の歯根膜炎です。
【治療法】歯ぎしりや食いしばりの場合には力によるダメージを軽減させるためマウスピースの装着が一般的です。また咬み合わせが悪い場合には、原因となっている歯を削って調整をしたり、矯正治療をしたりすることもあります。

歯のケガと歯根膜

転倒や事故などが原因で歯のケガをすることがありますよね。これらのケガの多くが出血を伴うと共に、歯が「割れた」・「欠けた」・「ずれた」など場合によっては一刻を争う時もあります。その中でも『歯が抜け落ちてしまった』もしくは『歯がグラグラする』などは歯根膜の損傷が関係しています。
先程お話した通り、歯と歯槽骨は歯根膜(シャーピー繊維)によって結合しています。これらはカチっと固定されているというよりはハンモックのような状態です。そのため歯は物を噛んだ時に少しだけ沈んだり、揺れたりすることでその力を上手く逃がしているのです。しかし歯のケガにより過剰な力が歯に加わると歯根膜が断裂してしまいます。その結果歯がグラグラしたり、抜け落ちたりしてしまうのです。これを歯の脱臼と言います。
ちなみに万が一歯が抜けてしまった場合に、それを元に戻せるかどうかは歯根膜にかかっています。歯根膜が無ければ元に戻すことができないのです。これについては過去のブログで詳しくお話していますので以下をクリックしてぜひご覧ください。
二度と再生しない歯根膜
歯根膜は抜歯と同時に失われます。そしてその部位に関しては二度と歯根膜が再生することはありません。それはつまり歯根膜の担っている食感や歯の感覚も失うということです。
ちなみに歯を失った時の治療の1つにインプラントがあります。その謳い文句に「ご自身の歯のように噛めます」という文言をよく目にしますが、それは100%正しいわけではありません。確かに入れ歯やブリッチと比較してインプラントは歯槽骨に固定されるため硬い食べ物も自分の歯のように噛むことができます。ただし、歯根膜がないので食感や歯ごたえというのは自分の歯のときとは少し異なります。実際にインプラント治療を受けた患者様にお話しを伺ったところ『硬いものを噛むと顎に響くような違和感があった』とのことでした。ただ時の経過とともに慣れて気にならなくなるようです。こういったことからも歯根膜の重要性がわかりますね。つまり歯根膜がある天然歯はどんな補綴物(人工物)よりも優れているということです。
さて今回は陰の主役、歯根膜についてお話しました。「歯ごたえ」という割に、それを感じるのは歯ではなく歯根膜だったという不思議なお話でしたね。そう考えると正しくは「歯根膜ごたえ」かもしれません。言いづらいですが(笑)食感は私たちの食事に潤いを与えてくれるものです。一生涯自分の歯で食事ができるよう大事にしていきましょう!!
