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歯がないと骨もなくなります~骨吸収
こんにちは。千葉県船橋市JR東船橋駅南口にあるビバ歯科・矯正小児歯科です。先日のブログで歯肉退縮についてお話しました。歯肉退縮(しにくたいしゅく)とはいわゆる「歯茎が痩せること」で歯周病菌などの細菌感染や歯ブラシや歯ぎしりなどの過剰な外圧などの影響による歯茎が下がることを指します。ところで、同様の現象が骨でも起こることをご存知でしょうか?歯を支える歯槽骨(しそうこつ)も痩せて減ってしまうことがあるのです。これを骨吸収(こつきゅうしゅう)と言います。
骨吸収とは?
骨では常に新陳代謝が行われていて、新しい骨を作る(骨形成)と古い骨が溶ける(骨吸収)を繰り返しています。この2つがバランスを取り健康な骨が維持されているのです。しかし、骨吸収が骨形成を上回ったらどうでしょうか?骨の密度が低くなり骨がもろくなります。代表的な例が「骨粗しょう症」です。これは骨密度が減り、骨が弱くなって骨折しやすくなる病気です。そして骨吸収は骨がある部位ならどこでも起こりうるものです。よって歯を支える歯槽骨も例外ではありません。
では、歯槽骨で骨吸収の働きが優勢になればどうなるでしょうか?もうわかりますね。骨量や骨密度が低下するわけですから、歯槽骨が歯を支えきれなくなり歯がグラグラしてきます。そして最終的には歯が抜け落ちてしまうのです。

骨吸収の原因とは?
では歯槽骨の骨吸収はどのようにして起こるのでしょうか?代表的な例をあげます。
歯周病
筆頭はやはり歯周病です。歯周病は歯周病菌により歯槽骨や歯肉をはじめとする歯周組織が破壊されてしまう病気です。初期症状は歯肉の腫れや炎症、出血ですが、重症化すれば骨吸収が進み最終的には歯が抜け落ちてしまいます。なお口の病気と聞くとむし歯をイメージしがちですが、実は日本人が歯を失う原因の第1位が歯周病と言われており、成人の罹患率は8割とも言われています。
歯ぎしり・食いしばり
歯槽骨に一定以上の力が加えられると骨吸収が起こります。ちなみに話が変わりますが、歯列矯正で歯を動かす際にはこの外圧による骨吸収の仕組みを利用しています。詳しくはこちらのブログ(ワイヤー矯正)をご覧ください。
入れ歯やブリッジ
入れ歯やブリッジは残った歯に装着して欠損部位を補うため、残った歯に負担がかかります。そのため前述の歯ぎしり・食いしばり同様に骨吸収が起こることがあります。
欠損歯の放置
食事の際よく噛むことは、歯槽骨に適度な刺激を与え骨の維持・成長を促します。これは咬合刺激(こうごうしげき)呼ばれます。そのため抜歯後その部位を放置してしまうとそこには刺激が伝わらず、その部分の歯槽骨で骨吸収が起こります。なお欠損歯の放置は歯が本来の位置から移動する挺出(ていしゅつ)などにも繋がります。
目には見えない骨吸収
ここからは前項であげた骨吸収の原因の中でも、欠損歯の放置に注目します。このブログを読んでいる方の中に「歯が1本なくても噛めるから」という理由で欠損部位を放置している方はいませんか?確かに慣れてしまえば噛むことはできるかもしれません。しかしそれはNGです。なぜなら残りの歯や顎などに知らず知らずのうちに負担がかかることになるからです。「たかが1本」と思いがちですが「されど1本」、その1本が命取りです。
ちなみにここまでブログを読んでも「でも…たかが1本くらい!」と考える方がいればこう考えてみてください。冷蔵庫を運搬するのに2人で作業していたとしましょう。ところがそれを1人で運ぶことになったらどうでしょうか?全重量を自分1人で支えるのです。厳しいですよね?これは極端な例かもしれませんが、歯が欠損しているとはこういうことなのです。本来あるべきものが無い状態というのは異常事態なのです。
しかも、厄介なことに骨吸収は目に見えません。なぜなら歯槽骨は歯茎で覆われており直接確認ができないからです。ゆえにそれに気が付くのは「歯がグラグラする」「歯が浮く感じがする」など骨吸収が進行して症状が出始めてからとなります。しかも吸収された(溶けた)骨というのは自然回復することはありません。
実際の症例
次の3枚の写真は同じ患者様のパノラマレントゲンです。レントゲンでは、硬組織(歯や骨)や金属などの人工物は白く写ります。逆に軟組織(歯肉や粘膜)などは黒く映ります。ここでは歯槽骨の経時的変化に注目しましょう。この患者様の場合、色付けした3つの部位の骨吸収が顕著です。

上顎前歯部(黄色)
2017年の時点では残根(根っこだけ残っている歯のこと)がありましたがその後抜歯となりました。2022年、2024年と変化を見ると歯槽骨のボリュームが減少しているのが分かります。

下顎右臼歯部(赤色)
2017年にはブリッジが入っていましたが、支えとなる歯を失ったため同部位のブリッジを除去しました。2022年、2024年と徐々に歯槽骨のラインが下がっているのが分かります。

下顎左臼歯部(青色)
2017年には残根が確認できますが、それらを抜歯してからは歯槽骨の水平ラインが下がっています。明らかに骨量が減少しています。
このように歯が欠損した部位の歯槽骨は少しずつ痩せていきます。またこの写真では分かりづらいかもしれませんが、骨吸収が進むと骨を覆うように付いている歯肉も痩せます。その結果、人によっては顔貌の変化が起こる場合もあります。まさに負の連鎖です。
欠損したらすぐに治療
欠損した歯がある場合、ビバ歯科では早急にその部分を補う治療をご提案します。欠損部位を補う治療とは、インプラント、入れ歯、ブリッジ、場合によっては歯の移植などです。ただ先程もお話した通り患者様の中には「1本なくてもまだ噛めるから」という理由で治療を先延ばしにする方もいらっしゃいます。しかし治療を先延ばしにすればするほど治療の選択肢が減ったり、もしくは同じ治療をするにもプラスの費用がかかるようになったりしてしまうのです。なぜなのでしょうか?
例えばインプラント治療では歯槽骨に穴を空けて人工歯根と呼ばれる土台を埋め込みます。これは歯の根っこすなわち歯根の代わりとなるものです。これにより人工歯がしっかりと固定され、天然歯のような噛み心地を取り戻せるのです。しかし、骨吸収が進んでしまうと骨量が少ないためそのままではインプラントをすることはできません。支えとなる歯槽骨が足りないからです。よってこのような場合にはインプラント治療をする前に骨を再生するための手術が必要になります。これは骨再生誘導法(通称:GBR法)と呼ばれ、ビバ歯科でもおこなっております。BGR法について詳しくは過去のブログでご紹介していますのでぜひご覧ください。

さて今回は骨吸収についてお話しました。通常骨の変化は目に見えてわかるものではないため、実感することは少ないかもしれません。しかし、レントゲンで見れば一目瞭然です。治療の選択肢を増やすことはもちろん残った歯を大切にするためにも、歯が欠損した部位は放置せず、できる限り早めにかかりつけの歯医者さんに相談しましょう。